2023年7月25日 内容を更新しました。
海の京都・京丹後ではじめた塩づくり
毎日の食事で欠かせない調味料のひとつ、塩。京都府の北端に位置する京丹後市で、日本海の海水を汲み上げ、平釜で焚く伝統的な製法で塩づくりに取り組んできた人がいます。
「善助 丹後の太郎塩」と看板がかかった民家のような建物で塩を作っているのは、池田龍彦さん。かつて建築関係の仕事をしていた池田さんは、大量に発生する古木を、なにか有価物にできないかと考えたそうです。
「古木を薪として活用して何かできないかと考えた時に、塩づくりを思いつきました。作り始めた当時は塩に関する知識はありませんでしたが、勉強するうちに人間にとっていかに塩が大切か」が分かってきましたと話す池田さんは、生まれ育ちも京丹後市。海や自然が身近な環境で育ったからこそ、このような塩づくりを思いついたのかもしれません。
ひとりで始めた塩づくりは、池田さん一代でたたむつもりだったそうです。しかし、人伝いで買ってくれる人が増え、今では料亭や飲食店が主力の卸先になりました。事業をたたむことを相談すると、「池田さんの塩がないと料理ができない」という声が耳に入るようになったそうです。そうしたお客様のニーズに応えるため、池田さんは事業を承継することを決めました。今回の募集では、池田さんに弟子入りして塩づくりを学び、発展させてくれる方を求めています。
多くの工程を手作業でおこなう
塩づくりの原材料となる海水は、京丹後市網野町浜詰地区の夕日ヶ浦港で2〜3日に1回ポンプで汲み上げています。汲み上げた海水を2トントラックにタンクを4つ積み込み、工場まで運びます。
汲み上げた海水を平釜に入れ、薪で火を起こし、1週間かけて約2,500リットルの海水を焚き上げます。焚き上げる際には、海水に含まれている不純物の除去に時間をかけているそうです。様々な有効波動が出るセラミックと共に海水を焚き上げます。焚き上がった塩を釜から取り出し、余熱で乾燥仕上げをします。
自動化設備はなく、薪で焚き上げ、夜中にも薪をくべているので、現在の体制では作れる量に限界があります。今後は、薪で焚く作業を継続しながらも、自動で火の調整ができる設備の導入を検討中だそうです。作業効率を上げることができれば、塩の製造量も増やせると見込んでいます。
池田さんは「薪で焚き上げることで遠赤効果が得られますので、これからも続けるつもりです。しかし、今の課題は収益性。塩づくりだけでは十分な稼ぎにはならないので、私も畑の手伝いなどをしたり、発酵食品関連の卸しなども手がけたりしています。新しい設備や釜の追加導入を検討し、効率化を進めたいですね」と話します。1年間じっくり取り組めば一通りの技術を承継できるそうです。
健康と環境のことを考えた塩づくり
塩は単なる調味料にとどまりません。海水に含まれる成分は、人間の体液の成分とほぼ一致していると学術的にも言われているので、私たちの身体と深くつながっていると池田さんはいいます。
いま私たちが一般的に食べている塩(食塩)は、1959年から1960年にかけて塩業整備臨時措置法に基づく第3次塩業整備が行われたことで、含まれている成分が池田さんのつくる塩とは全く異なります。近年は海洋汚染が懸念されていますが、池田さんのつくる塩は、有効な波動物質を入れることで汚染物質を中和、除去した塩を製造しています。*
*参考:公益財団法人 塩事業センター
手作業で、じっくり時間をかけて丁寧な塩づくりをしているため、一般的に出回っている塩と比べると、値段は高くなります。それでも、人伝いに顧客を獲得できているのは、池田さんの塩がおいしいと言ってくれるお客様や、健康を考えた塩づくりに共感してくれる人がいるから。池田さんの健康への想いに共感し、日本海をのぞむ京丹後で、池田さんの塩づくりに弟子入りをしてみませんか?
\あわせて読みたい/
連載「継ぐまち、継ぐひと」で、静岡県下田市で塩づくりを継業した事例を紹介しています。