戦後の昭和20年代に先代が開業してから『熊田畳店』は80年が経ちました。
「50年あまり地域の皆様にお世話になり、今日まで頑張ってまいりました」と話すのは現在、2代目である熊田欽互(くまだきんご)さん。郡上高校の同級生であった妻とも話し合い、「もうそろそろ店終いがいいかな」と考えておりました。しかし、郡上八幡の畳店には昔ながらの技術があります。
郡上八幡は城下町であり、神社仏閣が多く、古い町並みには昔の花街の名残が色濃く残っています。当然、昔ながらの座敷や茶室の和室も多く残っており、これらに対応するためには畳の技術が必要です。しかし、歳を重ねた現在は体力的にも厳しい状態でもあり、先を見据えてこの技術を引き継いでくださる方がいれば、機械及び事業をお譲りしたいと考えています。
近年の新築家屋には、畳の和室はほとんどなく、大半がフローリング敷となっています。それに伴い、畳の需要は大きく減少し、現在の年収は500〜600万円程度です。しかし、減ったといっても、神社やお寺、そして、畳敷の廊下などはまたまだたくさんあります。これらは誰かが面倒を見ていく必要があります。また、郡上市は寒い地域でもあるので、フローリングの上に畳を敷くフローリング敷きが多くあります。需要はいまだにあります。
畳の販売単価は一枚10,000円〜25,000円、材料等原価は約半分以下なので、一枚当たりの粗利益は8,000円以上。加工時間は一枚当たり約40分。しっかり仕事に取り組んでいけば、十分に生計を立てることができる地域の仕事です。
昔ながらの藁から畳をつくる技術を後世に残したい
畳屋の仕事は根気が必要で、地道な努力が求められます。その努力の積み重ねが技術となっていきます。例えば少し曲がった部屋の畳をどのように収めるかが問われます。「隙間がないか」「段差がないか」「敷居と一線になっているか」など、畳職人の腕の見せ所です。
郡上市内には茶室もあり、茶室のカットをどのようにきれいに収めるかが重要です。きちんと収まった時の達成感は今でも感じています。また、昔ながらの藁から畳をつくる技術など、後世に残したい技術がたくさんあります。この昔ながらの技術を一緒に学んでくれたら嬉しいです。
郡上八幡の伝統的な街並みと調和しながら、長年地域に貢献
この10年ほどは積極的な営業活動を行ってきませんでした。宣伝も行わず、昔からのお客様のご要望に応えることで、地域の方々に支えられてきたと感じています。だからこそ50年も続けてこれたと思っています。
今回、畳の加工機械の譲渡と加工場(倉庫約50坪)の賃貸での事業引渡しになります。事業の引き渡しにあたり、約半年間の技術指導も行います。
伝統的な街並みと歴史ある城下町で、昔ながらの藁から作り上げる畳の技術を引き継いでみませんか?