突然の閉店の知らせ、絶えない客足
2023年8月5日、大盛メニューで豊岡市民等に親しまれてきた「喫茶リンド」が8月29日をもって閉店するというニュースが、地元新聞に掲載されました。
「こんなに反響があるとは思わなかった」と話すのは、喫茶リンドのオーナーの森垣哲夫さん。
新聞に掲載されて以降、閉店を惜しむお客様が連日絶えることなく来店してくれているのです。
元々繁盛店ではありましたが、閉店のニュースによる反響は森垣さんの想像をはるかに超えたものだったようです。
取材に訪れた日も早々に材料切れによる売り切れの張り紙が貼ってありました。それでも店を覗いては帰って行くお客さんを見ながら、このお店が本当に地域に愛されていること、そしてそのお店がなくなろうとしていることを実感せざるを得ませんでした。
創業50年の節目に閉店を決断
喫茶リンドの創業は今からちょうど50年前の1973年。現店舗の向かいにあったボーリング場の1階スペースで開業しました。創業当時、森垣さんは25歳。なんと調理経験なしでいきなり開業をしたそうです。その後、1996年に現在の店舗に移転しました。
朝の7時半から夜の8時まで、コーヒーにモーニング、サンドウィッチなどの軽食、焼きそばやカレー、焼き飯などのボリューム満点のご飯類まで、全メニューがいつでも食べられる営業スタイルがうけ、売上は右肩上がり。最初の3年間は年中無休だったのだとか。以降も元日以外の年364日10時間以上の営業を続けています。
ひたむきな努力で豊岡市民の胃袋を満たしてきた森垣さんですが、創業から店を切り盛りする妻の廣子さんの体調不良やご自身の年齢から、創業50年の節目での閉店を決断したのでした。
51年目の「喫茶リンド」の後継者を募集
閉店のニュースの大きな反響により、喫茶リンドが地域に愛されていることを実感した森垣さんは、常連でもある地元の金融機関・但馬信用金庫の担当者からの勧めで、喫茶リンドを承継してくれる人を募集することにしました。
「建物と設備は無料でお譲りします」と話す森垣さん。
土地は借地のため、賃料は必要ですが、建物と調理器具や食器類などの設備一式に加え、屋号やレシピも無料で譲渡するという破格の条件です。
閉店というニュースから一転して、再オープンとなれば、その反響による集客も予想されます。
しかし、喫茶リンドは、長時間、ボリュームのある食事を提供するという採算度外視の経営スタイルを森垣さん夫妻と長男、次男夫妻の家族経営で実現してきたため、無料という譲渡条件につられ、無計画に承継をしても経営することは困難です。
そして、閉店を惜しむ声が大きい分、承継後の期待は大きな励みとなる一方でプレッシャーにもなり得ます。
それでも、後を絶たない客足が示すように、喫茶リンドの継続は多くの人に望まれています。森垣さん家族が50年積み上げてきた地域との信頼を受け継ぎ、51年目の喫茶リンドを開いてくれる方からのご応募を心からお待ちしています。
募集は、2023年11月末まで。
それまでに承継者が決まらない場合は、店舗を取り壊し、喫茶リンドは半世紀の歴史に幕を下ろすことになります。
※喫茶リンドへの直接のご連絡、ご訪問は、ご迷惑となりますのでご遠慮ください。ご応募、お問い合わせは、継業バンクのお問い合わせフォームをご利用ください。