動きはじめた地域の継業
2020年10月1日。岡山県美作市で継ぎ手を募集していた遊漁施設「右手(うて)遊漁センター」に待望の後継者がやってきました。
後継者となった宇都宮さんは姫路からの移住者。「渓流釣りが好きでいろいろな釣り場に足を運んでいる中、大好きな釣り場がなくなっていくのを目の当たりにして、何か自分にできることはないか」と考えていたといいます。
右手養魚センターでは、養魚のことをしっかり学び、魚の美しさを伝えられるよう技術習得に励み、「釣り人目線を取り入れた良い釣り場」にすることが目標です。
一方、右手養魚センターの経営者である右手信幸さんも「これでようやくスタートが切れる」と、宇都宮さんに託す事業の未来に期待を寄せています。
右手養魚センターは、運営に携わっていたメンバーが高齢化し、このままだと事業が存続できなくなってしまうと危機感を募らせていたところ、美作市役所から「地域おこし協力隊制度」を活用して、後継者を募集してはどうか提案され、今回の募集と採用に至りました。
地域おこし協力隊による今回の継業は、美作市、右手養魚センター、後継者にとって「三方よし」の明るいニュースになったと市の担当の尾高さんはいいます。
宇都宮さんには、協力隊の任期を通じて、右手養魚センターの仕事を覚えてもらうのはもちろん、地域に馴染んでもらえるように市もサポートしていく予定です。
「ようやくスタートが切れる」
そう右手さんが話すように、右手養魚センターの継業も、美作市の継業も、まだはじまったばかりの小さな一歩です。しかし、この一歩を踏み出すかどうかが、後に地域に大きな違いを生むことになるはずです。
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(募集内容はこちら)
家族で渓流を遊び尽くせる津谷渓流公園
岡山県の北東部に位置する「津谷渓流公園」は、岡山の三大河川の一つ吉井川の源流にあたり、国の天然記念物であるオオサンショウウオも生息する自然豊かな地域です。
この津谷渓流公園は、川遊びやキャンプ、BBQのほか、アスレチックやテニスも楽しめ、岡山市内からは2時間弱、大阪・神戸からも約2時間というアクセスの良さもあり、GWや夏休みなどは家族連れで賑わう美作市のアウトドア観光拠点です。
その中心を担うのが「有限会社右手養魚センター」。
主な事業は、渓流釣りや魚の手づかみなどの遊漁施設の運営、放流する「あまご」などの魚の養殖、市内の旅館や漁協、個人などへの魚の販売などで、年間の売上は約2,600万円の事業です。
今回は、この事業を担う人材を「地域おこし協力隊」として募集します。
地域おこし協力隊は、過疎化が進む地域に人材を受け入れ、地域の活性化などを図る国の制度です。任期は最長3年。この制度を利用し、養殖の技術や施設の運営を学び、地域とのコミュニケーションを深め、任期終了後には、右手養魚センターの経営者として事業を担います。
地域観光の拠点を残さなければ
右手養魚センターのはじまりは昭和45年。集落の仲間が趣味ではじめたあまごの人工孵化が成功したころから事業化。徐々に事業を拡大していきました。コテージ村やキャンプ場などの周辺施設が整備され、多くの家族連れで賑わうようになりました。
「人との出会いがうれしい」と現代表取締役の熊谷要次さんは言います。
右手養魚センターの来場者数は年間約1万人。仲間とはじめた小さな事業も今では地域になくてはならない観光拠点になりました。
しかし、創業から50年近くが経ち、創業者全員が70歳前後になりました。最盛期には岡山県内に50軒ほどあったというあまごの養殖事業者も高齢化を背景に今では数軒に減り、組合も解散する中、右手養魚センターでは、市の協力も得て、新しい発想で事業や地域を盛り上げてくれる人材に、事業を託すことにしました。
魚好きで、熱意があるひとに託したい
求める人物像は、
・魚好きで、研究熱心なひと
・心身ともに健康なひと
・地区のイベントや地域活動に積極的に参加できるひと
「地域との橋渡しは僕たちがちゃんとするから大丈夫」と話すのはオーナーのひとりの右手(うて)さん。70年この地域で暮らす先輩たちが面倒を見てくれるので、安心して地域に入っていけるはず。住居は市が近くの集落で用意します。
とは言え、50年間地域で積み上げた仕事を受け継ぐのは簡単なことではありません。大雨が降れば、寝ずに養魚施設の様子を見なければいけませんし、過去には病気で育てていた魚が全滅なんてこともありました。人口減が進む中、新しいことにも積極的に挑戦していく必要があります。
それでもこの恵まれた環境で暮らし、地域資源を生かした事業を営むことは、ほかにはないやりがいがあるはずです。地域おこし協力隊制度を最大限に活かして、地域の担い手としての一歩を踏み出してみてください。