耕作放棄地を活用した畑づくり
太平洋に面し、島と海岸線が美しい奥松島の景色が広がる東松島市の西部にある鳴瀬地区。東北地方に位置しながら比較的温暖な地域で、早春には椿が咲き誇ることから「東北の伊豆」とも呼ばれています。
心癒される自然が豊かな地域ですが、高齢化に伴ってあるひとつの課題があるといいます。それは、耕作放棄地の増加。耕作放棄地とは、誰かが所有していながら一年以上作物が栽培がされていない土地のこと。利用されない土地はやがて荒れ果て、景観を損ねるだけでなく、害獣の住処になる可能性もあり、日本全国で深刻な問題となっています。
そんな耕作放棄地を活用して、20年ほど前から農家を営んでいるのは、元東松島市役所職員の三浦養一さん。17年ほど農林水産課で働き、地域の耕作放棄地の課題に気づいたといいます。
「耕作放棄地がもったいないので、知人の土地を借りて柿や栗を植えはじめました。現在は柑橘類を中心に約15種類の作物を育てています。1年間を通して何かしら収穫できるんです」
三浦さんの畑があるのは、山の斜面のような場所。鳴瀬地区には平坦な土地が少ないため、傾斜を活用して収穫できる作物を育てているのだそう。
「山を開墾するうちに、北風があたらない暖かい場所があることが分かってきました。そこで。ゆずやかぼす、すだちも植えてみたら、収穫できるようになったんです。東松島で柑橘を育てているのは私くらいだと思いますよ」
と笑って話す三浦さん。柑橘や果樹のほかに山菜や野菜などを栽培し、最近はいちじくの栽培に注力しているといいます。
「栄養素も高くて人気の果物なので、ドライフルーツにして販売するのもいいかなと思っていて。未来の後継者の方のためにも、試験的にいろいろやっています」
現在69歳の三浦さんは、これから取り組みたいことも尽きない一方で、元気なうちに栽培のノウハウを教えたいと考えるようになりました。20年かけて整えてきた畑が耕作放棄地になってしまうのはもったいないこと。畑が畑として受け継がれていくことほど嬉しいことはないと養一さんは話します。
地域おこし協力隊のミッション
三浦さんのつくった作物は、直売所やスーパーマーケットに卸しているそうですが、年間売上は100万円前後。
農園の後継者候補は、最長3年間の地域おこし協力隊の任期中に、農園の売上増や6次産業化、副業・兼業での生業づくりなど、自立に向けて取り組んでいくことになります。
「私のいまの体力的にはこれが限度ですが、近隣の畑を借りて農地を拡大することはできると思います。栽培する作物を限定して注力すれば、より効率よく経営できるのではないでしょうか」
現在、三浦さんは、友人から借りた約50アール(約5反)の畑を管理しています。三浦さんの後継者になった場合は、これらの畑の管理を引き継ぐほか、畑の拡大を希望する場合は、三浦さんが築いてきた地域ネットワークに頼り、畑を紹介してもらうこともできそうです。
実際に、三浦さんのまわりでも手入れが困難になった耕作放棄地が増えつつあるとのことで、耕作放棄地を集約することで農業での収益も上げることができるかもしれません。
農業のおもしろさについて、三浦さんはこう話します。
「自分がつくった作物を、誰かが『美味しい』と評価してくださりお金をいただけることは、とても素敵なことだと思います。私の畑を継業したことがきっかけになって、その方の作ったものが東松島市を代表する作物になったらかっこいいと思います」
市職員として働きながら兼業農家として、耕作放棄地の問題解決に取り組んできた三浦さん。東松島市成瀬地区で農業に取り組むことで、地域の耕作放棄地の課題解決につながります。農業と何を掛け合わせるかは自分次第。半農半Xで自分らしい暮らしを実現したい方からのご応募をお待ちしています。