
地域の農家をまとめる役割として
宮城県色麻町(しかまちょう)は、山間部の奥まった地域に位置し、水流の上流にあたるため、水源が豊かでとても美味しい水が流れていることで知られています。
そんな色麻町の吉田地区で、株式会社清流しかまを経営するのが早坂清次さんです。30ヘクタールの農地で稲作を中心とした農業経営を行う傍ら、地域農業のまとめ役として担ってきました。
農業は1人では成り立たない仕事です。早朝から夕暮れまで行う日々の品質管理や膨大な時間を要する収穫作業など、人手が必要なことはもちろん、高額な農業機械の購入や修理など、費用面においても個人経営で負担できる範囲には限界があります。
少子高齢化で人材不足が問題となっている昨今、色麻町の他の地区では農事組合法人などの組織を形成することで、高額な農業機械の共同利用、田植えや収穫作業での助け合いなど、連携を図ってきましたが、吉田地区では合意形成が難しく、なかなか話がまとまりませんでした。
そんな中、「いつまでも待っているわけにいかない。できる人たちを集めてやってしまおう」と立ち上がったのが早坂さんでした。もともとは個人経営でしたが、2019年に「株式会社清流しかま」を設立。地区全体での組織化が難しい中、「俺が全部責任持つから」と周りに話し、法人化に踏み切りました。
現在、吉田地区には農家が26戸ありますが、そのうち15〜16名が実際に農作業を行っており、株式会社清流しかまは、その中心的なまとめ役として活動しています。
地域に合わせた柔軟な経営スタイル
吉田地区の農業の取りまとめ役としてスタートした経緯の通り、株式会社清流しかまは、地域の実情に合わせた柔軟な経営スタイルをとっています。
稲作については、地主さんから土地を会社が借り上げ、その地主さんに会社から作業を委託するという形をとっています。これにより、地主さんは土地の賃料と農作業の委託費を得ることができるため、安心して農業を続けることができ、同時に効率的な作業体系を構築しています。水田は合計で23ヘクタール。ひとめぼれ、つや姫、だて正夢、まなむすめなどの品種を栽培し、売上の約7割を占める主力事業となっています。

一方、ネギを中心とし、キャベツ、玉ねぎなどの野菜類については、会社がメインとなって作業を行っています。3ヘクタールで栽培しているほか、他の農家からネギの調整作業(掘り取り、皮むき、箱詰め、出荷)を受託するなど、地域全体のネギ産業を支える役割も担っています。

現在の年間売上高は約7,000万円。「清流しかま」という社名の通り、山に囲まれた清流に恵まれた土地の魅力を活かし、地域の農業を守りながら次世代につなぐ組織として年々成長しています。
地域農業の要として培った組織力
株式会社清流しかまの強みは、地域をまとめる組織力にあります。現在、従業員8名(正社員2名、パート6名)を雇用し、地域の雇用創出にも貢献しています。
しかし、地域をまとめることの難しさも痛感しています。
「1度まとめ役を買うと、あらゆる頼まれごとが多くなります。また、次のリーダーがなかなか育たないことも悩みの1つです。」と語る通り、後継者の育成は大きな課題となっています。
元々、株式会社清流しかまの次期経営者候補だった専務は、健康上の理由で継業を断念。早坂さん自身も現在78歳と、ご高齢であることからも、あと3年ほどの間には会社経営と合わせて吉田地区の農業のまとめ役を引き継いでくれる方を決めたいと考えています。
まずは地域おこし協力隊として
株式会社清流しかまの次期後継者を探していく中で、代表の早坂さんとしては、すぐの事業承継ではなく、まずは候補者に仕事や地域を知ってもらう期間が必要だと考えています。
そこで、色麻町では、株式会社清流しかまの元で農業に携わる地域おこし協力隊員の募集をすることにしました。
地域おこし協力隊として最長3年間、早坂さんと一緒に農作業を行うことで、色麻町および吉田地区の農業や周辺農家との連携などの手法を学び、卒業後に継業を目指します。
稲作やネギ栽培などの農業技術はもちろん、地域農業をまとめる組織運営のノウハウ、地域の人々との信頼関係の築き方まで、早坂さんが長年培ってきた経験を直接学べる貴重な機会です。
水資源に恵まれたこのまちで、地域の農業と暮らしを残していく。地方移住や就農に挑戦しながら、土地ならではの魅力を繋いでいきたいという想いのある方からの応募をお待ちしています。

