
仕事をつないでくれる人が欲しい
青森県つがる市の西端、日本海に面した車力地区で「えびな電気」を営む蝦名巧さん。住宅や農業用施設の電気工事を手がける個人事業主です。設計から施工までを1人で担い、地域の工務店や農家から長年信頼を集めてきました。
後継者を探し始めたきっかけは、数年前の大病。2年間現場を離れたものの、顧客は離れませんでした。
「みんな待っていてくれたんです」
だからこそ蝦名さんは、自分が本当に働けなくなったときのことを考えるようになりました。

45年以上にわたり電気工事に携わってきた蝦名巧さん
「後継者を探したい一番の理由は、お客さんに迷惑をかけたくないからです」
長年付き合ってきた農家や工務店との関係を途切れさせたくない。その思いから、蝦名さんは「道具も事務所も、お客さんとの関係もすべて託したい」と話します。
50年かけて築いた顧客基盤
えびな電気のルーツは、およそ50年前に蝦名さんの兄が創業した電気工事業にあります。蝦名さんも学校卒業後から兄の会社で働き、この仕事一筋に歩んできました。
11年前、兄が亡くなる際に残した言葉があります。
「お前が独立してやれ」

その言葉を受けて立ち上げたのが、現在の「えびな電気」です。兄の代から続く顧客との信頼関係も、そのまま引き継ぎました。
現在の取引先は地元工務店や農家、農協、市役所など。長年の信頼関係から継続的な依頼があり、一度つながった顧客との仕事は途切れることなく続いています。
「不思議なことに、次から次へと仕事が出てくるんです」
蝦名さんはそう笑います。
知られざる農業設備工事の世界
農業施設の電気工事は、一般的な住宅電気工事とは少し異なります。
仕事は、農家や工務店から図面を受け取るところから始まります。乾燥機や籾摺り機などの農機設備がどれだけの電力を必要とするかを確認しながら、施設全体の電気設備を設計していきます。

例えば、農機具は起動時に大きな電流が流れるため、単純な消費電力だけでは設計できません。機械の特性や周辺環境も計算しながら電力会社への申請を行います。
しかし、こうした電力計算は農業施設の電気工事の、ほんの一部です。
「実はこの仕事、とても奥が深いんです」
農業設備の知識、電気設計、CADによる図面作成、電力会社への申請、消防への届出、現場での施工や修理対応まで、1人で仕事を完結させるためには幅広い知識と経験が求められます。

さらに農家から「機械が止まった」と連絡があれば、夜でも土日でも現場へ向かいます。収穫期に設備が止まれば、農家にとって大きな損失につながるからです。
そうした対応を積み重ねながら、蝦名さんは設計から施工、修理まで任せられる存在として信頼を築いてきました。
その専門性と対応力こそが、病気で2年間現場を離れても顧客が待ち続けてくれた理由であり、今も仕事が絶えない理由でもあります。
独立したい人にこそ来てほしい
蝦名さんが求めているのは、住宅や建築物の電気工事経験を持つ人です。第一種電気工事士の資格があれば理想ですが、それ以上に重視しているのは現場経験と独立への意欲です。
「将来は自分でやりたいという人に来てほしい」
承継までの期間は従業員として雇用し、実際の仕事を通じて技術や顧客との関係を引き継いでいきます。
設計、申請、施工、修理対応まで。一人で仕事を完結できる技術を身につけたいという意欲のある人には、蝦名さんは惜しみなく仕事を教えるつもりです。

長年付き合ってきた顧客との関係、特殊工具一式、車庫兼事務所。蝦名さんは、50年以上かけて築いてきた技術と信頼を含め、そのすべてを後継者へ託したいと考えています。
「この地盤をそのまま継いでくれれば、十分やっていけると思います」
その言葉の通り、蝦名さんは50年以上かけて築いた仕事を、次の担い手へ託そうとしています。

