若いうちに次の経営者を育てたい
植苗木工センターは、1981年に苫小牧市の植苗(うえなえ)地区で、現代表の佐々木憲二さんの父親の佐々木和義さんにより創業されました。創業当初は「建具の佐々木」の屋号で建具製作を請け負い、1989年に「有限会社植苗木工センター」に名称を変更。2001年に現在の安平町遠浅に工場を新築移転しました。
現在、植苗木工センターの代表を務める佐々木憲二さんは、まだ47歳ですが、後継者がいないことから、早いうちから後継者を育て事業を引き継ぐために、次期経営者となる人材を募集することにしました。
「M&Aで会社を売らないかという話もあったりするけれど、自分もまだ若いので、数年かけて後継者を育てて譲りたい」と佐々木さんは話します。
市況は上向き。人材確保と生産性向上が課題
植苗木工センターは、主にゼネコン・工務店からの受注で、住宅や施設等の建具や家具などの内装設備を製作しています。多い時には1回の施工で3,500万円ほどの受注があり、年間売上高は1億円を超え、先代から経営を引き継いで6年間、黒字経営を続けています。最近は、社長の高齢化等を理由に同業者の廃業が増えていることもあり、業界内の口コミで仕事が増えているといいます。さらにメーカーと共同でサウナを開発するなど、新しい事業にも取り組んでいます。
さらに、2023年2月には、安平町に隣接する千歳市が、総投資額5兆円といわれる最先端半導体工場の建設予定地になったことが発表され、周辺地域では、土地や施設の需要が高まることが予想されています。植苗木工センターを取り巻く市況は追い風と言えます。
一方で、人手の確保は大きな課題となっています。現在の従業員は4名ですが、繁忙期は人手が足りません。今後の需要を取り込む上では、人材の確保と育成、さらには生産性の向上が不可欠となりそうです。
知識・技術を習得してから経営者に
植苗木工センターの受注管理や経営に関する業務は、すべて佐々木さん一人で担当し、ほかの従業員は全員が職人です。
佐々木さんも18歳から職人として働き、技術や木工製造の知識を一通り学んでから、後継者として先代から「ものづくり以外の知識」を学んできました。
職人として一人前になるには、最低5〜6年の修行が必要ですが、その知識がないと受注管理も人材の育成も難しいと言います。時間はかかっても次の経営者にも技術や知識の習得をしてほしいと佐々木さんは考えています。
そのため、今回の承継は長期戦です。すぐに経営に携わるわけではなく、数年にわたる下積みが必要となります。
ものづくりには体力が必要で、危険がともないます。比較的雪は少ないとは言え、北海道の冬場の寒さは身体を芯から冷やします(逆に夏場は涼しく作業しやすい)。繁忙期には残業は避けられないこともあり、『働き方改革』とはギャップがある環境かもしれません。
しかし、経営者として事業を成功させるには、どんな事業であっても苦労はあるものです。譲る側にとっても次期経営者を育てるのは大変な仕事で、M&Aで会社を売却した方が楽かもしれません。けれど、それを敢えて選ばず、次期経営者を育てることを選んだ、佐々木さんに、求める人材像を尋ねると「文句を言うやつがいいですね」という意外な答えが。
その真意を問うと「ものづくりにおいて、なんでも素直に聞いて言う通りにやる人は面白くない。これは納得いかない、もっとこうやったらいいんじゃないか、そういうやり合いがあった方がいいものができるんです」とのこと。
文句を言いながらも北海道からビジネスチャンスを掴む、ガッツある次期経営者を佐々木さんは待ち望んでいます。