本州の最北端に位置する青森県の下北半島。中でもさらに北にある風間浦村に、「青森ヒバ」の魅力を未来に残そうと奮闘するユニークな製材所があります。
下北半島の一大産業として栄えたヒバ産業
風間浦村に製材所を構え、木材の製材から商品開発までを手がける「村口産業」。1994年に有限会社として設立され、県内で多く生産される青森ヒバを専門に取り扱っています。
北海道南部から関東北部にかけて分布するヒバ。その中でも青森県産のヒバを「青森ヒバ」と呼び、主に下北半島や津軽半島に生息しています。
かつては村のいたるところに青森ヒバを加工する製材所があり、下北半島の一大産業として栄えました。しかし、外国から輸入される安価な木材の流通などが理由で、国内産木材の需要が低下。同時に製材所の数も減り、今では下北地域にわずか数件しか残っていないといいます。
このままでは衰退の一途を辿ってしまう青森県のヒバ産業。そこで今回は、村口産業で働きながら地域の一大産業であったヒバ産業を担い、地域おこし協力隊として盛り上げてくれるひとを募集します。
青森ヒバの魅力を広めるべく製材所を継業
もともと家業として養豚場と製材業を営んでいた村口さん一家。現在の代表・村口要太郎さんが本格的に製材所を始めたのには、青森ヒバに惚れ込むきっかけがありました。
当時、1000頭以上の豚を飼育していた養豚場で村口さんたちの頭を悩ませていたのが悪臭と伝染病です。そこで、豚のゲージに敷いていた藁を青森ヒバの“おが粉”に変えてみたところ、養豚場の環境が激変。驚くほど悪臭がなくなり、伝染病にもかかりにくくなったんだそう。
「あまりの効果に、青森ヒバの殺菌力のすごさを実感しました。この素晴らしさをひとりでも多くのひとに広めたいと、家業の製材所を承継し、いち早くホームページを立ち上げたり、製材以外に個人向けの木工商品の開発をしたり、様々なことに挑戦しています」
家業の製材業を継ぎ、2代目となった村口さんは、日本の最北端地域の風間浦村から全国に青森ヒバの魅力を広めようと、ホームページ「わいどの木」を立ち上げました。「わいど」とは下北半島の方言で「わたしたち」を意味し、この言葉には「いつも暮らしのそばにある青森ヒバ」=「わたしたちの木」を多くの人に届けたいという思いが込められています。
青森ヒバを使った世界にひとつだけのものづくり
消費者が青森ヒバを手に取りやすいよう、木工などの商品開発に力を入れるようになったのも村口さんが代表になってからのこと。まな板・木べら・しゃもじなどの調理用品、睡眠を快適にする枕カバーやベットフレーム、お風呂でヒバの香りを楽しむバスグッズなど、実用的なものからアイデアが光るユニークなアイテムまで、青森ヒバの効能を活かした幅広い商品を手がけています。
木曽ヒノキ、秋田スギと並んで、日本三大美林として数えられる青森ヒバは、カビや雑菌に対する驚異的な抗菌力や、リラクゼーション効果のある優しい香り、シロアリを寄せつけない強さが特徴です。そのままでも十分優れている青森ヒバですが、村口産業の商品は、カビがつきやすい外縁部の白太(したら)と呼ばれる部分を取り除いた赤身と呼ばれる部分だけを使用しています。
これほどクリエイティブな商品を生み出す村口さんも、ものづくり未経験者だったというから驚きです。
「木のデザインをそのまま生かした“世界にひとつしかない商品”をモットーに、試行錯誤を重ねてきました。商品開発もデザインもしたことのなかった私たちが、ここまでものづくりに熱中しているのは、何よりも青森ヒバが好きだから。青森ヒバの魅力を知れば知るほど試してみたいアイデアが湧き上がり、今ではものづくりが楽しくて仕方ありません」
誇りをもってものづくりを楽しめる人を募集
ものづくりが好きで、どんどんアイデアをかたちにしていきたいと話す村口さん。一方で、製材所で働く社員の高齢化が進んでいるという問題にも直面しています。新しいことを考えて試していきたいけれど、体力が追いつかなくなってきているそう。
村口さんの娘さんと息子さんは東京で青森ヒバを使ったプロダクトショップ「Cul de Sac-JAPON 」を運営しており、将来的にはふたりにこの製材所を継いで欲しいと思いつつも、今すぐに現場で必要な担い手の確保に頭を悩ませます。
そこで、村口さんのもとでものづくり技術を学び、ヒバ産業の担い手を募集することにしました。
「作業場が暑かったり寒かったり、一次産業なので大変なこともありますが、村口産業の社員はみんながものづくりに関り、誇りを持って働いています。このままヒバ産業を衰退させるのはもったいない。この誇りを受け継いでくれるひと、若い力で盛り上げてくれるひとにぜひきてほしいです」
将来的には、ヒバ産業の担い手として、地域おこし協力隊制度を活用し3年間で技術を承継していただきますが、本年度は、2025年1月~2月にかけて2週間から1ヶ月程度のインターンシップで、製材する木を見ながらのフィールドワークや、村口産業の製材所にて、商品ができるまでの工程を学びます。
風間浦村とヒバ産業を盛り上げてくれる担い手に関心のある方からのご応募をお待ちしています。