創業90年以上、家族と支えてきた老舗和菓子店

秋田県能代市に佇む「熊谷菓子店」は、昭和11年(1936年)頃の創業にした90年以上の歴史を持つ老舗和菓子店です。店主の熊谷郁子さん(80歳)は、現在一人で店を切り盛りしています。郁子さんの父親が創業し、その後は郁子さんとご主人が継ぎ、ご主人が27年前に亡くなってからは郁子さん一人で味を守り続けてきました。
「父が始めたお店をずっと続けてきました。小さい頃から和菓子屋の娘として育ち、20歳の時から配達などを手伝うようになりました。東京で1年間和菓子の専門的な勉強をした後、実家のお店を手伝うようになりました」と郁子さんは振り返ります。
地域の行事に欠かせない和菓子

熊谷菓子店では、お正月の餅や赤飯などが人気で、地域の行事に欠かせない存在となっています。また、栗まんじゅうや芋まんじゅうなどの焼き菓子も店頭に並び、長年愛されてきました。
「お寺や教会など、定期的にお供え用の和菓子を注文していただけるお客様がいます。長年通ってくださるお客様には本当に感謝しています」と郁子さん。常連客からは「なくなったら困る」という声もあり、地域に根付いた和菓子屋であることがうかがえます。
熊谷菓子店では、すべての商品を手作りで提供しています。大量生産された安価な和菓子が出回る中、手間ひまかけた手作りの味を守り続けています。
「お客様から『美味しい』と言っていただけるのが一番の励みです。続けてきたということは、何か価値があるからなのだと思います」と郁子さんは謙虚に話してくれました。
柔軟な条件で後継者を募集

郁子さんは、店の味と伝統を引き継いでくれる方を探しています。条件は柔軟で、店舗やレシピの譲渡方法については相談に応じるとのこと。自宅兼店舗の建物は、売却も賃貸も可能とのことです。
店舗は道路沿いに面した店舗スペース、その後ろに居住スペース、さらに裏側に製造スペースという構成になっています。2階建てで十分なスペースがあり、イートインスペースを設けるといった新しい展開も可能です。

「味を継いでくれるのであれば、お店の名前や経営方法にはこだわりません。時代に合わせて変化していくのも大切だと思います。お客様に喜んでいただける和菓子を作り続けてくれる方がいてくれれば嬉しいです」と郁子さんは話します。
熊谷菓子店の創業した昭和初期から時代は変わり、今では気軽に、安価に、甘いものが手に入るようになりました。一方で、90年以上続いてきた和菓子店と味は今も変わらず、地域とのつながりがより深く、地域に根付いています。「熊谷菓子店」を未来へとつなぐ担い手が現れることを、郁子さんは心から願っています。
