
魚屋だった先代が旅館業をはじめて50年超
石川県小松市、小松駅から車で約12分、粟津駅から徒歩3分の場所に佇む「大くぼ旅館」(ビジネスホテル大くぼ)。1966年の創業から50年以上にわたり、地域の宿泊需要を支えてきた老舗旅館です。

現在の代表である大窪栄一さんは2代目。「元々父は魚屋を営んでおり、小松市の大手機械メーカーの食堂に魚を卸していました。ある時期から同会社の独身寮の運営を頼まれるようになり、そこから旅館業をはじめることになりました」と創業の経緯を振り返ります。
当初はその機械メーカーの近くに2階建て木造の独身寮を建設し、まかない付きで社員を受け入れていました。同社にはビジネス客も多く訪れるものの、当時の小松市内には宿泊施設が少なかったため、ビジネス客や取引先企業の関係者が泊まれる旅館の必要性を感じ、現在の大くぼ旅館を創業することになりました。

旧館は1966年の創業時と同時に建てられましたが、大窪さんが31歳で経営を引き継いだ際にビジネスホテルとして利用しやすい洋室を設けるために増築。現在は全部で21室の宿泊施設として運営されています。「お客様にとって分かりやすいように旅館とビジネスホテル、どちらの名前も正式名称として使っています」
40年以上にわたって経営を続けてきた大窪さんですが、旅館の運営において必要な体力面に年々厳しさを感じており、この度、新たな経営者を募集することにしました。
カヌーの団体客や学生合宿の定宿
大くぼ旅館の特徴的な顧客層の1つが、カヌー競技の選手やコーチたち。旅館から車で10分ほどの場所にある木場潟は、日本カヌー連盟公認のカヌー競技コースとして知られています。
「もう10年以上前から、カヌーの選手やコーチの方々に年間を通してご利用いただいています」

カヌー競技関係者以外にも、高校生や大学生の部活動合宿なども受け入れており、団体客が売上のメインを占めています。まとまった人数での宿泊と会食が可能な施設は、小松駅周辺地域でも珍しく、宴会利用も含めたリピーターが多いことも強みです。

さまざまな需要に対応できる客室
大くぼ旅館は4階建てで1〜3階に合計21室の客室があります(4階は消防法により居室としては使用していません)。
客室は多様なニーズに対応できるよう構成されており、和室の個室が複数あるほか、大部屋も3室用意されています。

また、新館には11室の洋室があり、シングル、ツイン、トリプルと様々なタイプを揃えており、各室ユニットバスが付いています。全室及びフロント周りにはWi-Fi環境が完備されているため、ビジネス利用にも快適です。

個人利用からファミリー、団体客まで幅広く対応できる客室構成で小松市に来る様々な人たちの疲れを癒してきました。
旧館は築50年以上、新館も築40年以上が経過していますが、各部屋ともに適切に維持管理されており、まだまだ現役で活用できる状態です。
大浴場もある清潔な滞在環境
宿泊客が利用できる大浴場は毎日お湯を入れ替え、常に清潔な状態を保っています。ボイラー等の設備も引き継ぎ後、そのまま活用可能です。

料理提供に欠かせない厨房設備も充実しており、大型の冷蔵庫・冷凍庫や業務用の調理機器一式が揃っています。元々魚屋を営んでいた先代の時代から使用されている設備もあり、長年の営業に対応できる実用的な仕様となっています。

敷地のすぐ隣にある10台分の駐車場は年間30万円で賃借しており、次の経営者にもそのまま引き継ぎが可能。また、送迎用の25人乗りマイクロバスも譲渡資産に含まれるため、団体客の送迎サービスも継続可能です。
新鮮な地元食材を活かした心のこもった料理
大くぼ旅館のもう一つの魅力は、新鮮な地元食材を使った料理です。代表と奥様は共に調理師免許を持ち、長年にわたって宿泊客に手作りの食事を提供してきました。

「魚屋をやっていた頃からのお付き合いで、小松の公設市場から新鮮な魚を仕入れています。お肉も国産のものしか使いません。なかなか好評をいただいています。」
これらの仕入れ先やその他取引先についても、譲渡成立後には大窪さんからご紹介が可能です。
40年以上の経営ノウハウと顧客基盤
大窪さんが経営に携わって約44年。その間に培ってきた運営ノウハウと顧客ネットワークは、次の経営者にとって大きな財産となります。年間約3,300名の宿泊客を受け入れており、安定した事業基盤を築いています。
「年間を通して来られる固定客や、仕事の関係で毎週金・土・日に必ず宿泊される方もいらっしゃいます。」
年間売上はおよそ2,700万円。稼働率は現在50%程度に抑えているとのこと。
「少人数で経営しているため、あえて稼働率を抑えています。人手が確保できれば、もっと稼働率を上げて売上を伸ばすことも可能だと思います」
また、大窪さん自身が現在、組合長を務める小松市の旅館組合はもちろん、石川県の組合にも加盟しており、地域の宿泊業界とのネットワークについても充実しています。
新しい経営者への期待
75歳になった大窪さんは、体力面と年齢を考慮して事業の譲渡を決断しました。
譲渡にあたっては、顧客リストやノウハウの提供、仕入れ先の紹介なども予定されています。

「『大くぼ旅館』という名前には長年この地域で営業してきた歴史があるので、できれば残していただきたいですが、絶対という訳ではありません。既存のお客様を大切にしていただければそれで十分です」
カヌー競技という特色ある顧客層、新鮮な地元食材を活かした料理、そして長年培われた運営ノウハウ。これらを活かして、小松市を訪れる方々におもてなしを提供する宿泊業に挑戦してみませんか。