「阿仁マタギ」の名で広く知られている、秋田県北秋田市阿仁地区。伝統的な方法を用いて集団で狩猟を生業としている集団をマタギと呼んでいました。阿仁は、多くのマタギが暮らしてきた地域です。そんな阿仁地区には、「花の百名山」として知られ、冬にはスノーモンスターと呼ばれる樹氷群を観賞できる森吉山があります。
羽田空港から70分で到着する大館能代空港から車で約1時間の距離にある森吉山阿仁スキー場。そのスキー場から車で2分ほどの場所に、5棟のペンションが点在しています。そのペンション群の中で最も歴史が長い「阿仁の森 ぶなホテル」を引き継いで運営してくれる人を募集します。
3代目として承継した宿
「阿仁の森 ぶなホテル」のオーナーの山田博康さんは、北秋田市阿仁出身。25歳の頃に東京から北秋田市(当時の阿仁町)に戻り、地元企業に就職しました。森吉山のスキー場開発が始まるのと同時に宿泊団地もつくられ、その最初の1軒が現在の「阿仁の森 ぶなホテル」でした。
「実は私は3代目なんです。経営者が2人変わったのち、少し空いた期間があったんですが、だんだんと荒れていく姿を見て気になっていました。2004年に、競売にかけられたのを見つけて購入することにしたんです」
学生の頃から漠然と宿泊業に関することをやりたかったという山田さん。生まれ育った土地でこの施設を引き継ぎ、今日まで丁寧に経営してきました。
「今は宿泊者を少なめにして、ひとりで料理からベッドメイキング、掃除まですべてやっています。しかしもうすぐ75歳になるので、若い方に引き継いでもらえたらと思って募集することにしました」
「阿仁の森 ぶなホテル」の名前の由来は、施設の裏に広がっている森吉山の中腹にあるぶな林にちなんで。ぶな以外にも、山頂にかけてアオモリトドマツの原生林や300種類以上の高山植物が生息していて、豊かな自然を身近に感じることができます。
意匠が凝らされた建物と贅沢な設備
部屋数は全部で6室。1人部屋が1室、3人部屋が3室、4人部屋が1室、4〜5人が宿泊できる和室が1室あります。部屋にはバス・トイレが備え付けられています。黒を基調とした存在感ある外観とは対照的に、屋内は出窓や吹き抜けなどでたくさんの陽光が差し込む意匠が凝らされています。
また、食堂には鋳物の薪ストーブが設置され、離れには大きな檜風呂とサウナなど、設備も充実しています。
雪景色と薪ストーブの火を交互に眺めるのもよし、森吉山の自然の中の外気浴で整うのもよし。都会では得難い贅沢な時間が、観光客やリピーターを惹きつけます。
宿泊者の多くは森吉山のトレッキングやスキーを目的にやってくるそうです。
「8割が県外の方ですね。東北地域と東京近郊からが半々くらいでしょうか。残りの2割は県内からの方です。車で来る方が多いですが、公共交通機関で来る方がいらっしゃった場合は最寄り駅やスキー場まで送迎もしています」
最近では、阿仁スキー場のパウダースノーを求めて外国からの観光客も増えているといいます。
「私はインターネットでの発信はほとんどやっていないので、継いでもらう人には情報発信を頑張ってほしいです。そうすれば、外国人の方にも来ていただけるのではないかと思います。5軒ある宿泊施設のうち1軒は外国人の方がオーナーになったので、見込みはあるはずです」
現在は「じゃらん」や「楽天」など3つのWebサイト経由か、電話で予約を受けていますが、ホームページやSNSを立ち上げて発信することで、より多くの人に情報を届けられる可能性はありそうです。
自分らしい人生を送ることができる
実は山田さんは北秋田市の議員として長年キャリアを歩んできた方でもあります。宿泊施設オーナーとしてこれまでの人生をこう振り返ります。
「いい人生を送ってこれたと思います。自分次第で営業日を決めることができるので、1ヶ月ほどまとまった休みをとったりして、いろんなところに旅行にも行きました。宿泊者の方と一緒にお酒を飲みながら色んな話をする時間も楽しかったですね」
その一方で、売上を立ててビジネスとしてやっていくには工夫が必要になるだろうと山田さんは言います。
「今の私のやり方をそのまま継ぐのであれば、ある程度経済的に余裕のある方でないと難しいと思います。4月、5月、11月、12月の4ヶ月は閑散期なので、8ヶ月でしっかり売上をつくる必要があります。でも、ネットでの集客を頑張ったり、閑散期でも楽しんでいただける企画を組んだりすれば、売上を上げることはできると思います」
1990年に建てられた建物なので、定期的なメンテナンスは必要ですが、雪国仕様につくられ、太く立派な木材が使われているので、まだまだ活用できそうです。広い館内には居住空間もあるので、住み込みも可能です。
マタギの里の大自然の中で大切に受け継がれてきた宿泊施設で、あなたらしい仕事と暮らしを実現してみませんか。