秋田名物きりたんぽ鍋に欠かせない食材。「綴子のセリ」の生産技術を守る、価値ある継業 | ニホン継業バンク
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2022.10.04

継業中


秋田名物きりたんぽ鍋に欠かせない食材。「綴子のセリ」の生産技術を守る、価値ある継業

後継ぎ募集

県内唯一の夏セリの産地、綴子

県内でも有名なセリ産地、北秋田市綴子(つづれこ)

シャキシャキした食感と独特な香りを持つ山菜、セリ。秋田県では、地元を代表する郷土料理・きりたんぽ鍋に欠かせない食材のひとつとして、多くの人に親しまれています。

北秋田市綴子の田子ヶ沢集落で作られる「綴子のセリ」は、やわらかい食感と香り高い味わいが評判の伝統野菜。田子ヶ沢集落は、山の伏流水と、夏場の気温が高くなりすぎないといった立地条件が揃っており、夏でも露地物のセリが収穫できる珍しい場所です。県内唯一の夏セリの産地としてその名が知られ、地域の産業としてセリの生産が古くから根付いてきました。

山の清らかな伏流水が豊富に流れ込む環境が県内有数のおいしいセリを生む

受け継がれる集落伝統のセリ作り

斎藤光幸さんも、田子ヶ沢集落でセリを作り続ける農家のひとりです。会社員として定年まで勤めたあと、祖母と母が続けてきたセリ作りを受け継ぎ、セリ農家となりました。

綴子のセリを作り続ける斎藤光幸さん

斎藤さんの1日は、早朝の農作業から始まります。特に繁忙期である11月は午前3時頃から作業をする日もあるなど、新鮮なセリを出荷するために暗いうちから作業を始めます。さらに苗代と呼ばれる水を張った圃場の泥水の中での作業など、すべて手作業で行うセリの生産には大変なことも多いと語る斎藤さん。

しかし、それでも15年以上この仕事を続けてきたのは、この地で「綴子のセリ」を作ることに確かなやりがいを感じているからです。

「ほかの場所では作れない、希少価値の高いものを自分で作っているということに面白みがあるし、自分の作ったものがお客さんに『おいしかったよ』って喜ばれる。そういうことに救われていますね」

斎藤さんの苗代も2022年8月の大雨で壊滅的な被害を受けたが、綴子のセリを守るべく、現在も復旧作業を行っている(※写真は2022年7月撮影)

かつては、20戸以上ある集落の全戸が兼業農家としてセリを作っていましたが、現在セリ農家を続けているのは斎藤さんを含めてわずか4軒。生産者の高齢化も進んでおり、斎藤さんは「綴子のセリがなくなってしまうのではないか」という危機感を持ち続けてきました。

セリ作りに適した土壌や、県内でも珍しいセリ専用集荷場などの設備がありながら、このまま継ぎ手が見つからず、集落の伝統が消えてしまうのはもったいない––。そう考えた斎藤さんは、自らセリ栽培の技術を次の世代へ教えたいと、弟子の受け入れを決めました。

秋田県内でも珍しいセリ専用の集荷場

生産ノウハウを学び、独立へ

収穫したセリは、同じ集落のセリ農家と共同出荷しており、集荷場で一緒に出荷作業を行う

斎藤さんのセリ作りは毎年6月にセリ種を手植えするところから始まり、夏から繁忙期の11月にかけて複数回にわたって収穫・出荷します。冬でも凍らない地下水を汲み上げる設備が整っており、雪が降る冬場でもビニールハウスで栽培すれば、年中収穫することも可能です。

とはいえ冬場の生産は暖房費などのコストがかさむことや、これまで集落のセリ作りは兼業が主流であったことから、斎藤さんはセリ農家以外にも仕事を持つことを勧めています。

繁忙期以外は自由時間も多く取れますが、繁忙期は1日中セリの農作業に追われることも。サラリーマンとの兼業は難しいですが、時間に縛られないフリーランスや、冬場だけ別の仕事をするといった兼業の方法と相性が良さそうです。豪雪地帯の北秋田市では、除雪作業やスキー場のスタッフといった冬季限定求人も多くあります。

北秋田市の担当者は、「ハローワークと一緒に雇用対策を実施していることに加え、就労につながる資格を取得した場合は費用の支援も行っているので、いつでも気軽に相談に来てほしい」と話します。

セリについた泥を洗い流す作業。束ねたセリをサッと扇形に広げる所作が美しい

また、兼業の道以外にも、集落の使われていない圃場を整備してセリの生産量を増やせば、夏から秋の収穫で1年分の収入を得ることも可能ということです。

セリ作りのための土壌整備や栽培のノウハウは斎藤さんからすべて学ぶことができますが、一から自分の畑を作っていくため、セリの収入が安定するまでは1〜2年ほどかかることが想定されます。

北秋田市の担当者も「地域の一大ブランドである『綴子のセリ』がなくなっては困る」と話す通り、「綴子のセリ」はこの地域になくてはならないもの。安定した収入を得るまで少し時間はかかりますが、この場所でしかできない上質なセリの生産技術を守る、価値ある継業です。

畑づくりの期間も「良いものを作りたい」という想いを持ち、根気よく取り組んでくださる方をお待ちしています。

募集要項

事業者名

斎藤光幸(農家)

住所

秋田県北秋田市綴子

事業内容

セリの生産・出荷

継いでほしいひと

・地域ブランド「綴子のセリ」を守る意志がある人

・良いものを作りたいという意志がある人

継業までの流れ

①問い合わせ

②オンライン面談・選考

③採用

④生産技術の習得・独立までの基盤づくり(1〜2年)

⑤継業、独立

その他

北秋田市では、移住・定住支援制度を用意しています。
お試し移住体験制度では、体験費用、滞在費、交通費の一部を1世帯あたり最大5万円まで補助いたします。
その他の制度につきまして活用いただけるかは、担当部署にお問い合わせください。

北秋田市移住支援制度一覧

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