デジタルでは表現できない。秋田に残る「手で刷る」スクリーン印刷技術の継ぎ手を募集 | ニホン継業バンク
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2025.12.23

デジタルでは表現できない。秋田に残る「手で刷る」スクリーン印刷技術の継ぎ手を募集

弟子募集

機械では出せない味わいを刷る職人

秋田県能代市の一角に、昔ながらのスクリーン印刷工場「ハマヤプロセス工芸」があります。ここで希少となった手刷りの大型スクリーン印刷機を40年以上操ってきたのが、印刷職人・浜屋巧さんです。

スクリーン印刷とは、細かな網目状のメッシュスクリーン(版)にインクを通し、下の素材へと転写する技法。印刷したい部分だけインクが抜けるように版を作り、ヘラでインクを押し出しながら一枚ずつ刷っていきます。この“手で刷る”工程こそがスクリーン印刷の醍醐味です。一版ずつ色を重ねる際のインクの配合や、ヘラを押す力加減、角度の微妙な調整は、すべて職人の感覚に委ねられています。その手の動きひとつで、仕上がりの濃淡や質感が変わり、同じ版でも二つとして同じものは生まれません。まさに、職人の経験と感覚が作品に宿る技術です。

能代市でハマヤプロセス工芸を創業した浜屋巧さん
スクリーン印刷は一色ずつ刷るため、インクの混ぜ方や濃度で仕上がりが変わる

守り続けたスクリーン印刷技術

浜屋さんは20代の時、東京でこの印刷方法に出会いました。百貨店などの華やかなディスプレイが店内を彩っていた時代です。故郷の能代に戻った浜屋さんは30歳で独立。スクリーン印刷を武器に新しい人生を始めました。その後、地元スーパー「いとく」の全店舗のPOP広告を引き受けるなど、秋田の商業を支えてきました。

最大180センチ×90センチまで刷れる希少な大型スクリーン製版機

しかし1990年代後半から2000年代にかけて、デジタル印刷の普及で仕事は減少。それから約20年。浜屋さんは新しい印刷機器も導入しながら、スクリーン印刷の灯を消さずに守り続けてきました。

浜屋さんがスクリーン印刷した能代の七夕まつり「天空の不夜城」の看板

機械が奪えなかった価値

浜屋さんの技術の象徴が、独自開発した「杉の賞状」です。木の温もりと手刷りの風合いが合わさった唯一無二の仕上がりで、手渡された人が思わず飾りたくなる存在感があります。デジタル印刷では出せない“素材と対話する味わい”こそ、スクリーン印刷の魅力です。

独自の印刷技術を開発した杉の表彰状

手で刷るからこそ、一枚一枚に作家の魂が宿る。「そういう芸術的な部分が好きな人は、このスクリーン印刷機で、自分の表現を追求できる」と浜屋さんは言います。

現在、年間の売り上げの大部分はシート出力機を使った、能代市の夏のイベントで使用する案内看板制作で、スクリーン印刷の売り上げはわずか1割。それでも浜屋さんは手刷りのスクリーン印刷を続けています。「スクリーン印刷は私にとって生涯の命題です」と語るように、40年以上の間、自分の人生をかけて守ってきた技術を消したくないのです。

新しい世代に技術を託したい

手刷りのスクリーン印刷は、職人の高齢化やデジタル化によって衰退の一途をたどっています。

「元気なうちに教えたい。今のうちなんです」。技術と機械を託したいという思いは切実です。

創業以来、小さな工場で手作業による印刷を重ねてきた

後継者は、生活費を別の仕事で支えながら工場に通い、実地で学ぶ必要があります。浜屋さんが提供できるのは、技術と設備、そして時間。工場は学びたい人に開放し、最終的には全ての機械を無償で譲渡する考えです。

理想とする後継者像は「デザイン力・企画力・パソコンスキル」の三つを持つ人。浜屋さん自身が販路拡大に苦労した経験から、この三つがあればスクリーン印刷で収益化できる可能性が大きく広がるといいます。

1色ずつ色を重ねて印刷した手拭い

オリジナルTシャツやグッズ制作、杉の賞状のような独自商品の展開など、この設備を使って自分の表現を形にしたい人。そんな情熱ある人に技術を引き継いでほしい。

手刷り職人が守り続けてきた技術を未来へとつなぐ、情熱ある人の挑戦を、浜屋さんは待っています。

募集要項

事業者

ハマヤプロセス工芸

所在地

秋田県能代市豊祥岱1−101

事業内容
  • 印刷業
  • 看板制作
  • デザイン業
継いでほしいもの
  • スクリーン印刷の技術(無償で指導)
  • スクリーン印刷の設備(最終的に無償譲渡)
継いでほしいひと
  • スクリーン印刷や手仕事に情熱を持ち、芸術的な表現を追求したい方
  • デザイン力があり、パソコンスキルを持つ方
重要条件
  • 雇用契約ではないため、給料の支払いはできません
  • 別の仕事で生活費を確保しながら、技術を習得していただく形になります
  • 看板制作も並行して学び、将来的にはこちらで収入を得ることを推奨
  • 住居も自身で確保していただく必要があります
  • スクリーン印刷の設備はいつでも自由に使用可能(夜間・休日含む)
継業までの流れ

① お問い合わせ
② 応募(履歴書、職務経歴書の提出をお願いします)
③ 書類選考
④ オンライン面談
⑤ 現地面談
⑥ 数年間の研修期間(雇用なし)
⑦ 継業

資金調達について

継業成立後、希望者にはクラウドファンディングによる資金調達の支援が可能です。

▼詳しくはこちら

https://keigyo.jp/crowdfunding/

注意事項

・事業者様への直接のご連絡、ご訪問は、ご迷惑となりますのでご遠慮ください。

・ご応募、お問い合わせは、記事下の「応募・お問い合わせはこちら」からご連絡ください。

・継業バンクの利用料は無料です。成約報酬等も必要ありません。

・契約に関わる費用や許認可の申請に必要な経費等はご負担ください。

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