
新潟県津南町で唯一の音響会社「S&S SOUND」を営む村山 勝さん。幼い頃から音楽に囲まれて育ち、40年間にわたって地域の祭りやイベントを音で支え続けてきました。
小学校5年生でドラムを叩き、高校生になると親を説得して音響機材を購入した村山さん。その時から始まった音響との付き合いは、今では地域になくてはならない存在となりました。津南町の祭りやイベントで響く美しい音の裏には、村山さんの熟練した技術と、音楽への深い愛情が込められています。

40年間磨き続けた音響技術への妥協なきこだわり
村山さんの音響技術は、単に音を大きくするだけのものではありません。会場に足を踏み入れた瞬間から、その職人魂が発揮されます。
「体育館でも、三角屋根とドーム型の屋根では全然違うんです。」と村山さんは説明します。三角屋根は音が一直線に跳ね返り、ドーム型はバラバラに散乱する。それぞれの特性を理解し、必ずある「デッドポイント」を見つけ出して調整していく。400ヘルツや1キロヘルツなど、特定の周波数だけが強調されてしまう現象を、長年の経験と鋭い聴覚で察知し、最適な音響バランスを作り上げていきます。
また機材への投資も妥協しません。「安いアンプだと、ボリュームを上げるとキンキンと高音ばかりが強調されて、低音が出なくなる。本当に良い音を出すには、高音も低音も一緒に出てくる馬力が必要なんです。」質のいい機械を入れ替えていくことも、良い音を出すための必要不可欠な投資だと村山さんは語ります。
さらに重要なのは聴く人への配慮です。「演奏者側も、観ている側に立たないと、なかなかうまくいきません。だから音響を担う者は演奏者側にも聴衆側にも立てる感性が必要です」と語るように、技術だけでなく人の心に寄り添う姿勢こそが、村山さんの音響技術の核心なのです。



地域の絆を音で繋ぐ、やりがいある仕事
「お祭りって、人間をそわそわさせるんです。」と目を輝かせる村山さん。年に一度の祭りでは、人々のエネルギーが溢れ出します。普段は寡黙な人も「次は何すればいいんだろう」と積極的に声をかけてくる。その高揚感に包まれながら、「みんながみなぎってるエネルギーを感じることができる。その力をもらって、僕もやっているところがあるんです。」と話します。
特にバンドの発表会は格別だと言います。「発表会なんかあると、演奏者は気持ちがたかぶって前の日から眠れないとかさ。それが当日発揮できる。そのみなぎったパワーを感じることできるんだよね、面白いですよ。」音楽のために生きている人たちの純粋なエネルギーに触れることが、村山さんにとって何よりの楽しみなのです。
収入面としても毎年の地域のイベントの契約があることで安定しています。大型イベントでは一度に200万円から300万円規模の仕事となることもあります。現在は年齢的にも仕事をセーブしていますが、毎年しっかりとした生活基盤を築けます。

音楽愛を地域の宝に変える人を探して
「やっぱりこだわりを持った人に来てもらいたい。」求めているのは音楽経験があり、聴く人の心に本当に響く音を追求できる人です。
「音響をやっているのは、ほとんどバンドをやっていた連中が多いです。」と語るように、バンド経験者なら演奏する側の気持ちを理解できるため大きなアドバンテージになります。ただし、村山さんは「音を理解するまでには時間がかかる。」と技術の奥深さも語ります。単なる機械操作ではなく、会場の特性を理解し、演奏者と聴衆の両方に配慮できる感覚が必要なのです。
長年かけて揃えた数百点の音響機材については、リースまたは買い取りでの引き継ぎを検討しています。初めはリースからスタートし、徐々に買い取っていく形も可能です。
この継業は単なる商売の引き継ぎではありません。地域の人々の人生の大切な瞬間を音で彩る、かけがえのない仕事の承継です。津南町の美しい自然に囲まれ、音楽を通じて地域に貢献する。そこには、人と人との温かい繋がりの中での仕事がここにあります。
40年間この地で育てられた技術と想いを受け継ぎ、地域の絆を音でつなぐ歩みを始めてみませんか。