雪国・新潟県津南町の静かな住宅街。 宮沢畳店の作業場からは、畳を仕上げる機械の音が響いています。 81歳の店主・宮沢 房良さんが畳に向き合う姿は、60年を越えて地域の暮らしを支え続けてきた職人の誇りを感じさせます。
長年の経験を生かし地域のニーズに応える
「昔は地域に30軒以上の畳店があったんです」と話す宮沢さん。 しかし時代の変遷とともに畳店は減少し、現在では津南町内にわずか2軒を残すのみとなりました。 その中にある宮沢畳店は、地域のニーズに応え続け、工務店や寺社仏閣との強い信頼関係を築いてきました。
特に寺社仏閣の特殊な畳工事は、長年の経験と高度な技術が必要とされる分野。その技術は、この地域の文化財を守る重要な役割も担っています。
かつては畳に使用する「イグサ」を活用した枕などの製品も手がけ、その品質の高さから皇族の方々にも製品が届けられた実績があります。職人としての技術だけでなく、文化的な側面も持ち合わせています。
完璧を求めて 一枚一枚に込めた職人の誇り
20歳で畳職人として道を歩み始めた宮沢さん。手作業での製作から機械化への移行を経験しながらも、寸法の精度や仕上がりへのこだわりは変わりません。
「昔は1日4枚が精一杯だった。現在は1日10枚ほど製作することが出来るようになりましたが、お客様に喜んでいただける仕事をすることは、昔も今も変わりません」寺社仏閣の特殊な畳工事や、多様化する住宅ニーズへの対応など、求められる技術は年々高度化。その中で培われた技術と経験は、この地域の大切な財産となっています。
「自分の仕事に本当に満足を感じ始めたのは60歳を過ぎてから」と話す宮沢さん。その言葉には、畳職人としての厳しさと、完璧を求め続ける職人気質が感じられます。
宮沢さんの魅力は畳づくりだけではありません。作業の合間に詠んだ俳句は全国コンクールで入賞を果たし、皇室の歌会にも招かれた経験を持ちます。
「畳を作りながら、常に頭の中で言葉を探していた」職人の手仕事と芸術的感性が融合した、宮沢さんならではの表現でした。
家族の思いと未来への願い、新たな可能性を求めて
2人の娘さんを育て上げ、今は妻と二人の生活。 「広いこの家も、2人では大きすぎる」と微笑む宮沢さん。 年齢的にも体力が落ちてきて、体調を崩してしまったことも重なり、娘さんたちからは「元気なうちに今後のことを考えていってほしい」と言われました。
地元の工務店からは「畳職人の技術を残してほしい」という声が寄せられていることも、後継者を募集するきっかけとなりました。
宮沢畳店の建物は、鉄骨造りで、1階には広々とした作業場を完備。2Fは住居として使用できます。 中古ではありますが6年前に導入された畳製作機械は現役で今も稼働しています。
事業を引き継ぐにあたり、「畳職人としての技術を引き継いでいただければ理想的ですが、この場所で新しいことを始めていただけるのも大歓迎です。畳職人の仕事は、1つ1つの仕事に向き合い、お客様に喜んでいただけるものを作り上げていくやりがいのある仕事です。 技術の習得には時間がかかりますが、機械化により作業効率は上がっています。この伝統ある職人の技術を、引き継いでいただける方とご縁があればと思います」宮沢さんの言葉には、次世代への期待が込められています。
後継者への技術指導も可能で、工務店との繋がりなど、長年培った信頼関係も引き継いでいきます。
長年にわたり信頼と技術を培い、新たな可能性とともに受け継いでいただける方との出会いを待っています。