豊岡鞄の工場を譲渡。製造設備完備、80年続くカバンづくりを承継してくれる方も歓迎 | ニホン継業バンク
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2025.06.16

豊岡鞄の工場を譲渡。製造設備完備、80年続くカバンづくりを承継してくれる方も歓迎

事業譲渡

豊岡市の鞄産業で80年の歴史を持つ老舗メーカー

兵庫県豊岡市は「豊岡鞄」のブランドで知られる鞄産業の一大産地です。その歴史は、1200年前の柳行李(やなぎごおり)から始まったとされており、現在も地域には数多くの鞄関連業者が集積し、問屋から部材調達、製造までが地域で完結する環境が整っています。

そんな豊岡鞄の世界で、約80年の歴史を持つ「ビジネス鞄 河崎」では、資産と事業を承継してくださる方を募集しています。

現在70代の河崎さんが40年近く経営を続けてきましたが、自身のご年齢を理由に事業承継を決意しました。土地・建物の売却が前提となりますが、鞄づくりの技術や豊岡市内でも希少な特殊加工技術を河崎さんから学ぶこともできます。

豊岡市内にある工場兼事務所。製造から仕上げまで一貫して行える設備が整っている

父から受け継いだ志を胸に、技術を磨き続けた40年

現代表の河崎さんは、約40年前にお父様の代から続く鞄製造業を承継しました。お父様は柳や竹で組んだカバン(柳行李)の製造から始め、時代とともに現在のような革製品へと事業を発展させてきました。

「父は昔、つくった鞄を自転車で配達して回っていました。家の納屋のような場所で作って、夜遅くまで働いていた姿を覚えています」

一方、河崎さん自身は、もともと銀行員として10年間勤務していました。30代で家業を継ぐことになりましたが、お父様から技術や経営など全てを教えてもらった訳ではないと話します。

「『目で盗め』が基本でした。父から引き継いだ時も、『来年から任せる』と言われただけ。経理から製造まで何もわからない状態でした」

周りからは「1〜2年で辞めるだろう」と言われていた中、「今に見返してやろう」と、少しでも見聞きしたものは細かくノートに記録していたという河崎さん。「一度聞いたら二度と聞かない」という心構えで、必死に技術を身につけていきました。

河崎さんがつくった鞄はその後様々な賞を受賞し、皆さんに愛されるメーカーとして今日まで鞄づくりを続けています。

メイン商品であるビジネス鞄。上)ソフトアタッシュケース 下)ダレスバック

希少な特殊技術「シャドー加工」

河崎さんが手がけるのは主にビジネスバッグ。中でも同社が誇るのは「シャドー加工」と呼ばれる特殊な染色技術です。同じ生地でも、この技術により濃淡をつけることで、まるで影がかかったような立体感のある高級な仕上がりになります。

左が元の生地、右がシャドー加工後。より高級感のある色艶に仕上がる

「これは私が1から開発した技術です。昔は同様の技術をもったメーカーが豊岡市内に3〜4社ありましたが、皆さん辞められて、今では市内においてうちしか加工できません」

この技術により、高品質で高級感のあるビジネスバッグを製造し、問屋業者からも「この技術ができるのは河崎さんだけだ」と頼りにされています。

また、今でも他の鞄メーカーなどから突然電話がかかってきて「この技術を教えてほしい」と連絡がくることがあるそう。

「そのようなお願いはお断りしています。自分で努力してここまで磨いてきた技術を、簡単に教えるわけにはいきません」

事業譲渡前に河崎さんからシャドー加工をはじめとする技術を教えることはありませんが、譲渡が成立した上で、鞄づくりのやる気がある方には技術を教えることは惜しまないとのことです。

今回の募集では、土地・建物のみの譲渡も可能なため、必ずしも鞄づくりをすることが要件ではないですが、「ビジネス鞄 河崎」が長年培ってきた希少な技術とともに承継される方の応募をぜひお待ちしています。

充実した設備で一貫生産が可能

「ビジネス鞄 河崎」では、カバンの設計から寸法出し、型紙作成と、すべて自前で行っています。強みは、裁断から縫製、仕上げまで一貫して行える設備が整っていること。1階の工場には、生地を自動裁断するオートカッターをはじめ、プレス機、特殊ミシン、コンピューターミシンなど、カバン製造に必要な機械が一通り揃っています。

「他社や学生さんなどが見学に来られることもあるんです。ワンフロアでこれだけの設備が見られるのは珍しいと言われます」

これらの設備を新品で揃えるとなると数千万円はかかるとのこと。工場にあるのは長年使用しているものが多いですが、古い機械は構造がシンプルで故障しにくく、部品の調達も比較的容易だといいます。

オートカッター、プレス機など、製造の設備が整っている

土地・建物のみの譲渡の場合、これらの設備は引き渡し前に河崎さんが整理するとのことですが、鞄づくりをしたい方には、設備についての交渉も可能です。詳しくはお問い合わせください。

また、建物の2階は現在サンプル品などを置く倉庫として活用していますが、1階と同じく広々としています。継ぎ手の方には上手に活用していただければと思います。

豊岡で鞄事業を行うことのメリット

豊岡市で鞄製造を行うメリットは、材料調達から外注先まで地域内で完結できることです。生地屋、金具屋、縫製業者など、必要な協力会社が市内に集まっているため、効率的な生産が可能です。

「豊岡には必要な材料や部材がすべて揃っています。(他府県で製造しようとすると、近くで材料が調達できないということがあり、)北海道まで材料を送っているようなケースもあります。でもここなら何でも地元で調達できて、すぐに相談もできます」

譲渡が成立した方には、河崎さんから技術だけでなく取引先の紹介も含めたサポートを受けることが可能です。

「ここを買ってもらえるなら、うちにしかできない技術も含めて、すべて教えます。取引先も紹介します。私も銀行員から転身して、何もわからないところから始めました。大事なのはやる気です。やる気がある方には教えられることは教えたいと思います」

承継の決意と継ぎ手への期待

現在の事業は、豊岡市内の問屋からの注文が中心で、自社製品の開発も行っています。注文を受けてから製品を作る場合と、流行を読んで自社で企画・製造する場合があります。

河崎さんが事業承継を決意したのは、年齢的な理由が最も大きいといいます。

「70代になると、今の流行についていくのが難しくなりました。カバンの売れ筋は若い人が決めるものですが、自分より一回り上下の年代は考えられても、若い世代の感覚はなかなか掴めません」

河崎さんとしても、可能であれば豊岡鞄の伝統と技術を次の世代に継承したいという想いがあります。

「せっかく80年続いてきた技術や設備、お客様との関係を無駄にしたくありません。特にシャドー加工の技術は、私がいなくなったら豊岡から消えてしまいます。それは地域にとっても大きな損失だと思います」

そして、ものづくりの喜びを次の世代にも味わってほしいと話します。

「自分がデザインして作ったカバンが、全国の店頭に並んで、知らない誰かに使ってもらえる。この仕事にはそんな素晴らしいやりがいがあります。」

河崎さんは、豊岡鞄の伝統を引き継いで、さらに発展させてくれる方を心待ちにしています。

譲渡概要

事業者名

ビジネス鞄 河崎

事業内容

アタッシュケース・ダレスバッグ等、ビジネスバッグの製造販売

所在地

兵庫県豊岡市一日市408-1

譲渡内容

<基本となる譲渡資産>
・工場建物 (2階建て/361.23㎡)
・土地(439.66㎡)

<希望者は以下も譲渡可>
・製造設備一式(オートカッター、プレス機、各種ミシン等)
・特殊技術の指導
・取引先の紹介

譲渡価格

22,000,000円(土地・建物)
工場横の土地についても売却可能 金額は要相談

<希望者のみ>
設備一式 金額は要相談

継いでほしいひと

・土地・建物を活用してくれる方
・(鞄づくりも承継する場合) やる気があり、真摯に取り組める方 

継業までの流れ

①お問い合わせ
②応募(履歴書、職務経歴書の提出をお願いします)
③書類選考
④オンライン面談
⑤現地での面談、施設見学/説明
⑥土地・建物の譲渡
⑦希望者は設備の譲渡/技術の承継

注意事項

・事業者様への直接のご連絡、ご訪問は、ご迷惑となりますのでご遠慮ください。
・ご応募、お問い合わせは、記事下の「応募・お問い合わせはこちら」からご連絡ください。
・継業バンクの利用料は無料です。成約報酬等も必要ありません。
・不動産契約に関わる費用など、必要な経費はご負担ください。

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