JR豊岡駅西口から約300m、国道426号線沿いにある、目を引くシマウマの像が立っている店舗があります。その名も「cimauma café」といい、パスタとカレー、スペシャルティコーヒーが自慢のお店です。
豊岡市内で福祉医療・保育事業を展開しているSUNZ GROUPが運営をしていましたが、2024年3月をもって閉業し、引き継いでいただける方を募集しています。内装もそのままの状態で残っているため、すぐに飲食店を開業することが可能です。
憩いの場をつくるため開業
創業したのは、豊岡市内で福祉医療・保育事業を展開しているSUNZ GROUP。代表の三山さんは創業の経緯をこう話します。
「コロナ禍真っ只中だった2021年、福祉医療・保育職員たちは、日々の業務に追われ、感染予防の観点から外出も外食もできない状況が続いていました。リフレッシュもリラックスもできない環境の中で、少しでも職員さん達に癒しの空間を作ってあげたい、貸切営業をして人の目を気にせずリラックスして外食を楽しめる場所を作りたい、という思いで始めました」
時を同じくして2021年に芸術文化観光専門職大学が開校し、以降、毎年80名の学生が全国から豊岡市に移住しています。「学生さんたちにとっても、居心地のいい場となり、豊岡のおもしろい大人たちと交流できるようなコミュニティの拠点になれば」という思いもあったそうです。
そこで、内装やメニューにもこだわり、老舗のお店が比較的多い豊岡市では珍しい、おしゃれさと可愛さ、美味しさを兼ね備えた新しいお店を目指しました。
メニューを絞り込んだ営業
飲食事業を展開していたノウハウを活かし、パスタとカレー、スペシャルティコーヒーに絞ったメニューを考案。
会員制パスタ専門店で提供していたレシピを、スタッフの誰もが仕込みから保存まで担えるように工夫。完成度が高いソースをベースに、具材やスタッフの経験値次第でブラッシュアップが可能なレシピがつくれるような運用方法も構築しました。
パスタ以外にも、特製の「オリジナル牛すじカレー」も看板メニューのひとつ。牛すじは厳選された黒毛和牛のみを使用し、長時間かけてトロトロに柔らかく煮込んでいます。
長時間かけて柔らかく煮込んだ牛すじと、まろやかな口当たりのルーの相性が抜群で、そこに但馬産温泉たまごを落とし、見映えも美しく仕上げたそうです。
スタッフからは、「メニューの考案、原価計算、試作から提供まで一連の流れを任せてもらいました。自分の考案したメニューを召し上がったお客様から、すごく美味しかったという声をかけてもらえたことは、何よりも嬉しかったです」との言葉も。
自社職員や若者たちに憩いの場を、と始めたカフェは、働くスタッフたちにとっても成長できる場として育っていきました。
閉業の理由と承継後の課題
今回、わずか3年間で閉業することにした背景には、コロナ禍も落ち着き、福祉医療・保育職員たちのリフレッシュの場が必要なくなり、別事業の営業にリソースを集中するよう方針を転換したことがあります。
現在、店舗の内装や設備はすべて残ったままなので、承継後すぐに営業開始が可能です。しかし、「コンセプトの見直し、スタッフの確保、営業時間の検討が課題」と三山さんは話します。
芸術文化観光専門職大学の学生の来店を見込み、若者や女性をターゲットに設定していましたが、地域ニーズに上手くマッチしなかったこと、集客施策に手を打てなかったこと、ディナー営業に着手できなかったことも売上を伸ばせなかった要因だと振り返ります。
承継される方は、新しい客層に向けたメニューやコンセプトの検討と、夜の営業をするための人材確保が必要となりそうです。
「私たちSUNZ GROUPは、これからも福祉医療、保育、飲食やアミューズメント事業などグループをあげて、豊岡市に恩返しと貢献をしていきたいと思っています。cimauma caféを承継してくださる方がいれば、グループで運営する各種SNSでの発信など、全力で応援させていただきます」と三山さん。
飲食店経営をすることは決して簡単ではないですが、豊岡に根ざして事業を展開してきた会社がそばにいることは心強いです。希望があれば、レシピを譲ることも可能です。また、店舗には住居も併設されているので、別で住居を構える必要がないこともプラスと言えるでしょう。
ちなみに、シマウマのモニュメントは、cimauma cafeが入居する前からあったそうで、以前は天ぷら店さんだったのだとか。豊岡市の移ろいを見守ってきたシマウマのいるお店で、あなたらしいお店にチャレンジしてみませんか?