2020年に平田オリザ氏が主宰する劇団「青年団」の本拠地「江原河畔劇場」がオープンしたことで注目を集める豊岡市日高町。最寄駅のJR江原駅から、徒歩約5分の住宅街にある三角屋根のお店。綺麗な洋菓子がショーウィンドウに並ぶ「西洋菓子工房 フーケの館」は、京都の洋菓子メーカーで修行を積んだ真狩和雄さんが、1984(昭和59)年に開業した洋菓子店です。
クリスマスや仕事や勉強を頑張ったご褒美や、誕生日を「フーケの館」のケーキで祝ってもらった子どもが親になり、自分の子どものお誕生日を同じケーキで祝う、そんなこともあったかもしれません。
創業から約40年。毎日、35種類の生菓子と60種類の焼き菓子を店頭に並べ、豊岡市民のハレの日に寄り添ってきた「フーケの館」ですが、これまで後継者に恵まれず、真狩さんの体調も優れないことから、事業の承継先を探すことになりました。
18歳で洋菓子の世界に入ったという真狩さんは、京都の洋菓子メーカーでの修行を経て、24歳で地元・豊岡の洋菓子店に入社。29歳のときに独立し、現豊岡市出石町に15坪の店舗を構えました。
コック服を着て洋菓子をつくる姿や、但馬地域ではじめてムースを提供するなど、当時新しかったそのスタイルと商品は話題となり大繁盛。創業10周年を機に事業を拡大して現在の場所に移転。全盛期には年商1億2,000万円を超えました。
また、真狩さんは、地域の洋菓子文化の発展のため「兵庫県洋菓子協会但馬支部」を立ち上げ、但馬地域の洋菓子の振興と技術向上にも取り組んできました。教え子たちは但馬地区だけでなく全国でお店を構えるなど活躍しているそうです。
店舗と設備を譲渡。希望があればレシピも
「フーケの館」の経営状況は、コロナ禍でも売り上げを落とすことなく、現在も安定しています。
しかし、創業時と比べると地域の人口は減少し、地域の商圏は確実に小さくなってきています。一方で、OEM商品の生産の依頼は増えていることから、製造体制を整え、外注を増やしていけば、事業を成長させることは可能だと真狩さんは考えています。
製造業では設備の老朽化と、それに伴う設備更新の投資が承継時のハードルとなることが多いですが、「フーケの館」はこれまで積極的に設備投資をしてきたため、冷蔵庫やオーブンなど、新しい設備が揃っています。
レシピと屋号については、希望があれば引き継ぐこともできます。また、真狩さんに顧問などとして一定期間、店舗に残ってもらい、ケーキと焼き菓子の作りかたを教えてもらうことも可能です。
たたむなんてもったいない。設備もレシピも揃っている洋菓子店を承継し、豊岡市民なじみの味を引き継ぎながら、事業拡大にもチャレンジする事業者をお待ちしています。