高齢化が進む地域の唯一の交通事業者として

脇野沢交通は、陸奥湾に面する下北半島の先端・脇野沢地区において唯一の交通事業者です。
一般貸切バス事業のほか、路線バス事業、スクールバスの運行、そして給食配送業務まで、地域の公共交通インフラを一手に担っており、もし廃業すれば高齢化が進む地域において、唯一の公共交通手段が失われてしまうことになります。
その重責を担ってきた社長の滝本守雄さんですが、後継者不在のため、自身が事業を継続しているうちに第三者へ事業を譲ることを決断しました。

脇野沢交通の創業は1986年。
現代表の滝本社長の父親が自転車・バイク修理業から、時代のニーズに応える形でバス事業に業態を転換。子供がたくさんいた時代、高校生を現在のむつ市の中心部の高校まで送るスクールバスを日々運行し、地域の子供達の通学を支えました。
しかし、少子化に伴い学生も高校も減少。マイカーも普及し、高校の送迎バスの需要がなくなったことで休止。現在の主な事業内容は、小中学校の送迎バスと学校給食の配送に加え、高齢者が通院や買い物に利用する平日1日7便の路線バス2系統の運行です(脇野沢〜九艘泊7km、脇野沢〜源藤城5km)。路線バスは月間約200人が利用しています。
観光業に活路を見いだせ

現在、脇野沢交通は車両4台を保有しています。滝本社長と妹の2名が取締役を務め、正社員2名、アルバイト3名が在籍。繁忙期には臨時雇用者2名がハンドルを握ります。
令和6年度の年間売上は約1,650万円。その約80%がむつ市との契約によるもので、経常利益483万円を計上しました。
直近の経営は明るい一方で、少子高齢化と人口減少の一途をたどるこの地域では、公共交通の需要は減少。ドライバーの高齢化も進み、ハローワークに運転手の募集を出しても応募がなく、現在の運転手への負担は大きくなっています。

こういった経営環境の中、滝本社長が強く推奨するのが、観光バス事業への注力です。
脇野沢地区はフェリー航路で津軽半島と結ばれており、観光客の往来があります。現在も津軽半島から訪れる観光バスが平日で3台程度あり、下北半島を周遊する観光ルートが形成されています。
「フェリーがあるからこそ、観光バス事業には大きな可能性がある」と滝本社長は語ります。
奇しくも令和8年度より新型フェリーが竣工されることが決まっており、観光を含めた利用促進が進められるであろうことが予想されます。津軽半島側の事業者等との連携により、双方向での観光客の送迎や周遊ルートの開発が期待できれば、地域交通をベースに、新しい事業展開も可能かもしれません。
「地域の交通を守ることも大切ですが、それだけでは継続は難しい。観光バス事業に力を入れて、会社として成長していける道を見つけてほしい」滝本社長の言葉には、現実を見据えた上での期待が込められています。
下北半島から、これからの地域交通を考える

高齢化と人口減少が進む脇野沢地区の住民にとって、脇野沢交通は必要な公共インフラである一方で、人口減少は事業者利益の減少に直結します。「残してほしい」と望む声を聞きながら、その利用者は減っていく…そんなジレンマを抱えているのです。
地域の交通手段がなくなるかもしれない… むつ市と脇野沢地区、脇野沢交通が抱える課題は、少子高齢化と人口減少が進む多くの地域が今後直面する課題かもしれません。
これは、一個人、一事業者のみで解決できる課題ではないかもしれませんが、だからこそ、青森県とむつ市は、脇野沢交通の担い手を募集し、一緒にこの課題と向き合いたいと考えています。
私たちと解決に取り組んでくれる企業、個人の方の参画をお待ちしています。