創業のきっかけ
約200年前の古民家の風情を残しつつ、古さを感じさせない宿「舟渡屋」は、世界農業遺産の清流長良川と吉田川が合流する郡上八幡が対岸から一望できる場所に位置しています。
1996年の東海北陸自動車道開通時に解体予定でしたが、大工さんが「この素晴らしい材料を移築して、民宿をすると素晴らしい古民家民宿ができるはずだ」との提案を受けて、現在の場所に移築したことが、民宿を始めたきっかけです。
民宿を営むのは、山田忠平さんと和子さん夫妻。忠平さんが81歳、和子さんが75歳と年齢的な課題もあり、現在は夏の3ヶ月間のみ営業をしています。
短い営業期間ながら、満室になることもたびたびあるといいます。長良川へ鮎釣りに訪れる人や、7月中旬から9月上旬にかけて30夜以上にわたって踊られる「郡上おどり」のお客様でにぎわいます。
旅行サイトには一切掲載していないため、宿泊した際に次回の予約をしていただいたり、口コミで広まっています。
「来年また来るね、と言って予約をしてくださったり、常連のお客様が口コミで広げていただいていてます。もっと受け入れたい気持ちもありますが、無理しても私たち2人では対応できないので、このやり方を続けています」と忠平さんは話します。
ほっと一息つける宿
2階建ての古民家の面積は444㎡ととても広く、1階には食事をする座敷や囲炉裏があり、宴会では100人ほど収容可能です。客室は2階に6室あり、合計30人が宿泊できます。
広い縁側に座ると、手入れの行き届いた庭や、長良川、対岸には郡上八幡の街並みが見えます。川面の風が心地よく感じることでしょう。部屋からも長良川が見え、夜はせせらぎが聞こえます。
「常連のお客様は、この縁側に座ってビールを飲みながら川涼みをすることが最高の幸せ、とおっしゃいます。また、子どものころを思い出すとおっしゃる方もいて、ひとりひとりの楽しみ方をされています」
お風呂やトイレも改修済みで、古民家ながらも古さは感じさせません。
自慢はお手製の田舎料理
1人あたりの宿泊料金は、1泊2食付きで9,000円(税込)。自慢料理は何といっても長良川の「鮎」料理。焼き方をプロの料理人からも褒められるほどです。
さらに山椒の薫りが食欲をそそる手作りのあまごの甘露煮、あずき菜、ふきなどの山菜を中心とした田舎料理の食事を提供しています。
忠平さんは郡上おどり保存会の会長を勤めており、「民宿を活かして郡上八幡の魅力をもっと国内外に発信していきたい」と考えています。
3ヶ月間の宿泊者数は、最盛期で600人から800人ほどで、売上高は約1,500万円程度でした。インターネットや旅行サイトでの発信を始めたり、営業期間を伸ばすなどすれば、さらなる売上拡大が見込める可能性もあります。
場所を移転しながらも郡上八幡のまちの移ろいを見守り、宿泊するひとの心を癒やしてきた200年の歴史ある古民家民宿を活かして、宿を経営してみませんか。