古式しまだ麺の味に感動して創業
古式しまだ麺は、奥美濃地域に古くから伝わる製麺法で、麺が放つ熟成熱を逃さず、送風だけでじっくりと乾燥させることが特徴です。のべ60時間かけて表面と中心部の水分を一緒に抜きながら乾燥させるため、乾麺で2年以上保管することが可能です。日本髪の「高島田」に挿すかんざしに麺の形状が似ていることから「しまだ式製麺法」と呼ばれています。
「株式会社そばの更科」があるのは、岐阜県郡上市の白鳥町(しろとりちょう)。工場の200メートルほど先には清流として知られる長良川の源流が流れ、その伏流水を麺の製造にも使っているのだそうです。
1978年に現社長の永田絅二さんが創業スタッフとして参加し、古式しまだ麺の乾麺を中心に、うどんやきしめん、ラーメンといった生麺を製造販売してきました。永田さんは他の事業を手がけた後、1991年に社長に就任し、30年以上が経過しました。
蕎麦の事業を始めたきっかけについて、永田さんはこう話します。
「小さい頃はうどん文化が根付く地域で育ったので、蕎麦は身近な食べ物ではありませんでした。しかし大人になってから蕎麦を食べるようになり、『こんなに美味しい料理があるんだ!』と気づきました」
蕎麦の美味しさに気づき全国を食べ歩き、ここ白鳥町でしまだ麺を食べた味に感動した永田さんは、この味を全国に展開しようと、蕎麦の事業を始めました。
廃業するつもりだった
そばの更科の麺は、岐阜県内の食品スーパーや土産物店、産直市だけでなく、お中元・歳暮時の商品として全国に販路を展開しています。最盛期は3億円の年商でしたが、廃業することを視野に入れていたため徐々に事業を縮小し、現在の年商は約3,000万円です。
「もともと廃業するつもりでしたが、誰かにこの味や製法を引き継いでもらえたら嬉しいと考えるようになり、事業承継を決めました。私は現在78歳なので、元気なうちにいろいろ教えてあげたいと思います」と永田さん。
現在、機械を導入して古式しまだ麺を製造する会社は日本に数社程度。永田さんは「岐阜県内には家内工業的にやっている事業者はいるかもしれないですが、本格的に製造している会社は、ほとんどいないのではないでしょうか」と話します。
機械化が進んでいるとはいえ、乾燥に60時間かけ、手間もひまもかかる古式しまだ麺製法。大量生産されている蕎麦と比べると価格は高くなってしまいますが、それは丁寧につくられている証拠でもあります。
大きな製造ラインも完備
2つの工場には、生麺ライン、半生麺ライン、茹で麺ライン、焼きそばオートスチーマライン、乾燥めんラインの5つの大きな製造ラインが並び、社長を含めた8名の従業員が従事しています。設備は減価償却済ですが、丁寧に使っているため、経年劣化等は見られません。
「整理・整頓・清潔・清掃・躾の5S運動に力を入れ、食品会社としての食の安心安全に努めてきました」と社長の永田さんは自信を持って話します。
また、製造管理マニュアルを作成しているため、ノウハウの引継ぎもスムーズに行えそうです。株式譲渡後は、希望があれば一般顧問という形で製造技術やノウハウを教えてもらうことができます。
日本三大清流の長良川をかかえる豊かな自然に囲まれる郡上市にて、昔ながらの製法を受け継ぎながら、日本食文化の代表格である蕎麦を通して新しいチャレンジをしたい方からの応募をお待ちしています。