岡山県倉敷市の漁師町・下津井の沖は、潮の流れが速く、薄く柔らかいわかめが採れる瀬を有していたことから、戦後にわかめ養殖に力を入れました。昭和20~30年代には、鳴門と並ぶわかめの大生産地となり人気を呼びましたが、瀬戸内地域の工業化による環境悪化や市場の変化などにより、「下津井わかめ」は市場から姿を消してしまいます。𠮷又商店も漁業とまちの衰退とともに、一度は廃業を余儀なくされました。
現店主の余傳(よでん)吉恵さんは、教職にあり35年間まちを離れていたが、お母さんを看るため故郷の下津井に通ううち、「下津井を元気にしたい!」という思いを強くし、下津井わかめの復活に取り組みました。
お母さんのころから付き合いのあった漁師さんに下津井わかめを生産してくれるようにお願いするも、売り切ることができず赤字続き。しかし「このわかめは、全国どこにもない地域性・希少性のある逸品。何とかして下津井わかめを復活させ、寂しくなった下津井のまちの元気にしたい」という思いで店を切り盛りし、今ではメディアにも取り上げられ、観光ツアーも立ち寄る地元の名物店です。
残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響で、店舗での売上は減ってしまいましたが、卸売は堅調。下津井わかめに加え、利益率の良い干しタコ、鯛の一夜干しなど、下津井産の高付加価値の商品にも力を入れています。
故郷への深い愛情を持つ、余傳さんですが、お母さんの介護と自身の年齢から、次の世代にこのバトンを渡したいと願っています。
余傳さんが、やっとの思いで復活した下津井の食文化「下津井わかめ」を継ぎ、下津井を元気にしてくれる方を募集しています。店舗2階は住居となっていますので住み込むこともできます。