地元住民が集うラーメン屋

能代市二ツ井の国道沿いに、なんだか気になる店構え。控えめな看板、ハートが描かれたベンチ、木製ブランコが並ぶ「らあめん大将」です。整然としたチェーン店とは対照的に、あたたかく素朴な雰囲気のお店で、店主の秋林秀一さんは10年以上、ラーメンを作り続けてきました。

秋林さんがこのラーメン店を始めたのは67歳のとき。24歳から東京や秋田県内で天ぷら屋、大衆食堂、居酒屋と、43年の飲食業人生を歩み、一度は飲食業を引退したものの「最後にラーメンで挑戦してみたい」という思いがどうしても消えませんでした。
未経験のラーメンに挑んだ1〜2年目は客がほとんど来ない日々。それでも1日3軒のラーメン屋を食べ歩き、地域の人に好まれる味の研究を重ねてきました。

「一定の味を保つことを心がけている。味が変われば常連客が離れていってしまう」
長年飲食業を経営してきた経験から培われたこだわりを大事に、日々ラーメンを作っている秋林さん。
その姿を見守るように徐々に地元の常連客が増え続け、なかには決まって週に1度、年間50回ほど訪れる人もいます。
「自由に使ってほしい」
秋林さんは今、年齢と体力のことを考え、店を手放す決意をしています。そのうえで、継ぐ人への願いはとてもシンプルです。
「味をそのまま継いでほしいわけではない。その人の自由にしてほしい」
ゼロから挑戦してきた自身と同じように、次の担い手にも“自分の道”を歩んでほしい。そんな思いから、秋林さんとしてはラーメン屋だけでなく、カフェや事務所など、継ぎ手の方の希望によって幅広い活用方法を歓迎しています。

建物と土地は賃貸・売却どちらも相談でき、賃貸の場合は月額8万円(駐車場10台分付き)で利用可能です。
屋号を引き継ぐかどうかも自由で、設備は希望すれば無償で譲り受けることができます。内装の変更も問題ありません。秋林さんは未来の担い手の挑戦にすべてを委ねています。

手つかずの可能性が広がる店
現在の営業は週5日、昼11時から14時までの3時間のみ。これだけで十分な収益をあげるのは難しいものの、逆に言えば、店にはまだ手つかずの伸びしろが多く残されています。
夜営業を加えることも、テーブル席を増やすことも、メニューを刷新することも可能です。また、国道沿いで視認性が高く、駐車場も10台確保されているため、新規客の開拓余地も大きくあります。


築11年の建物はまだまだ状態が良く、レイアウトの変更も容易。秋林さん自身がここで新たな挑戦を始めたように、次の担い手も成長とともに地域に親しまれるお店をつくっていただければと思います。
味を育て、町に寄り添える人へ
秋林さんが担い手に求めるのは研究心、そして町を知ろうとする探究心です。
二ツ井は穏やかに時間が進む町。昼どきに店へやってくるお客さんの多くは、長年この土地で暮らしてきたおじいちゃんやおばあちゃんたちです。
「油っぽいラーメンはダメ。昔ながらの味にそっと工夫を添えるくらいがいい」と秋林さんは語ります。でも同時に「若い人を呼ぶなら、こってりの一杯で勝負するのも面白い」とも。
どんな人に、どんなふうに、この店を愛してもらいたいのか。その答えは次の担い手が自由に描くことができます。

大切なのは自分の思い描く店を胸に、必要な技術を磨き、町の人の好きな味を探り続けること。知り合いがいなくても、技術とまっすぐな姿勢があれば道は開ける。秋林さんはそう信じています。
たとえ次の担い手が新しい店づくりをしたとしても、町の人がふらりと立ち寄り、いつものように席に座れる場所であってほしい。
それが秋林さんが未来に託す願いです。


