
湖面に映える四季の移ろいと共に歩んだ半世紀
青森県と秋田県の県境にある十和田湖畔にただずむ「レストランやすみや」。
1973年の秋、十和田湖の美しい湖面を臨む絶好のロケーションに誕生した店は、2024年の冬から休業中ではありますが、今年で創業50年の節目を迎えました。

昭和の十和田湖観光ブームの中、初代オーナーである千葉さんの祖父が「ここでなら」と決意を固め、国有地を借り受けて建設した220坪の堂々たる建物は、湖を眺めながら食事ができる唯一無二の場所として長年愛され続けてきました。
その後、二代目である千葉さんの父が事業を引き継ぎ、やすみやの基盤をさらに発展させ、6年前から三代目の千葉さんが代表を務めています。

2階建ての店内からは、季節ごとに表情を変える十和田湖の絶景が一望でき、1階からは湖面がすぐ手の届くような距離に感じられ、最高のロケーションでお食事を楽しめる特別な空間となっています。

昨年秋には映画のロケ地としても使用され、やすみやのせんべい汁を食べるシーンが撮影されました。映画の公開後は、いわゆる「聖地巡礼」による新たな集客効果も期待できる、エンターテインメント性も備えた立地となっています。
インバウンド需要に支えられた確かな事業基盤
ここ数年のやすみやの顧客層は、実に95%が海外からの観光客で占められており、特に台湾からの団体客が中心となっています。コロナ禍を経て観光需要が回復した後は、むしろコロナ前を上回る集客を実現しており、インバウンド観光の追い風を存分に受けています。
営業形態は効率的な団体客対応が中心で、1日に観光バスが入れ替わりで来店するほどの人気ぶりです。台湾の旅行会社との直接的なネットワークも確立されており、「現在は休業中ですが、電話一本入れれば団体客はすぐに戻って来ます」と千葉さんが言うように安定した集客基盤が築かれています。

客単価もランチで2,000円台と高く、2024年度の年間売上は4,300万円、営業利益700万円という堅実な収益を上げてきました。
やすみやの料理の特徴は、しょっつるや地鶏をベースにした鍋料理中心の秋田と青森の郷土料理です。
台湾のお客様に特に人気なのは、一人一鍋スタイルで提供される鍋料理で、これに十和田湖名物のニジマスやひめマスの塩焼き、お刺身などをセットにしたメニューがインバウンドのお客様には特に喜ばれています。
地元の食材を活かしながら、観光客の方々に東北の食文化を伝える架け橋の役割も果たしているのです。


やすみやでは12月から3月末まで冬季休業を取る営業スタイルを採用してきましたが、近年は冬季観光のインバウンド需要も高まっており、通年営業することでさらなる収益向上の可能性があります。
レストランを営業している8ヶ月間で年商4,300万円を実現していることを考えれば、通年営業による事業拡大の余地は十分にあると言えるでしょう。
また、やすみやは1日に複数の団体客の対応をしてきましたが、夫婦2人体制の営業でも1日1団体(30〜40人)に絞ってスタートし、客単価を上げることで収益を確保するスタイルも可能という柔軟性も持っています。
半世紀の歴史を託す新たな継ぎ手の方へ
今回の事業承継を決断された背景には、千葉さんご家族の深い想いがあります。
現在84歳になるおばあ様が専務として現役で店舗運営に携わってこられましたが、さすがに限界を感じるようになってきました。また、長年やすみやを支えてきた従業員の皆様も同世代で高齢となり、これまでの体制を維持することが困難な状況となったのです。
千葉さんご自身には2人のお子様がいらっしゃいますが、将来この事業を引き継がせることへの葛藤もありました。「自分が亡くなった時に、子供たちに負担を背負わせることになるのではないか」という想いと、50年間地域に愛され続けてきた店を途絶えさせることへの複雑な心境の中で、新たな担い手への承継という決断に至りました。





土地は環境省との賃貸借契約(年間十数万円程度)となっており、新しいオーナー様への契約引き継ぎについても環境省の了承を得ています。
また、本件はすでに事業承継・引継ぎ支援センターへ登録されている案件のため、問い合わせいただいた後は事業承継・引継ぎ支援センターが承継を支援します。

創業者の想いを受け継ぎ、50年の歴史を積み重ねてきたこの場所で、十和田湖の美しい自然と共に新たな物語を紡いでいただける方との出会いを心よりお待ちしております。