
自然の恵みを活かした多彩な農業
秋田県北秋田市の山々に囲まれた静かな集落で、長年農業を営んできた大川正直さんが後継者を探しています。約7ヘクタールの田んぼと40アールの畑、15ヘクタールの山林を所有する大川さんは、この美しい自然と共に生きる農業の喜びを次世代に残すことを望んでいます。

大川さんの農園では、秋田のブランド米「あきたこまち」を中心に稲作を行っています。あきたこまちは粘り気が程よく、郷土料理のきりたんぽにも最適なお米として知られています。また、山の芋(やまのいも)の栽培も手がけており、収穫時には300グラムを超える立派な山の芋が育ち、毎年約3トン近くの収穫があります。


農作業は7月から11月頃までで、11月の山芋の収穫が終わると、冬の間はお休みになります。
大川さんは現在一人で農業を営んでいますが、収入は1,100万円ほど。「お米だけでなく野菜の品目を増やせば、人手はかかるけれど収入も増える」と言います。
「自分の裁量で作業時間や内容を決められるのが農業の魅力」と語る大川さんは、会社勤めをしていた時代よりも今の生活の方が充実していると笑顔で話します。

取材に伺ったのは、ちょうど田植えの準備の時期。他の農家さんの準備が進む中、「自分は遅れているけれど、それも自分で決めるので問題ない」という大川さん。会社勤めであれば、納期や締め切りに追われるところですが、「自然と相談しながら自分で決める」農業の自由さを感じたエピソードです。
朝の空気が澄んだ時間に田んぼに出るのも、雨の日にゆっくり休むのも、すべて自分次第。上司の顔色を伺う必要もなければ、満員電車に揺られることもありません。
季節の移ろいと共に作業内容が変わり、自然のリズムに合わせて生きる心地よさがここにはあります。「必ずこうしなければいけないという決まりもない」という大川さんの言葉からは、型にはまらない自由な働き方への解放感が感じられ、すべてが自分の選択で決まる生活は、会社員時代には味わえなかった贅沢な自由です。
高齢化の進む集落を存続させるために
山に囲まれた七日市三ノ渡地区では、春にはわらびなどの山菜が豊富に採れ、夏には水田が広がり、秋には首を垂れる稲穂、紅葉、そして冬には2m近い雪に覆われます。四季折々の豊かな自然の変化は、都会では味わえない自然と共に生きることの喜びを教えてくれます。

集落の歴史は古く、大川家は代々この地で農業を営んできました。しかし、かつて30世帯以上が暮らしていたという集落は、現在9世帯まで減少。以前は小学校もあった集落ですが、現在は統合され、子どもたちはスクールバスで通学しています。大川さんが子どもの頃、小学校の校庭から山を眺め、時には遠足で山に登ったという思い出も語ってくれました。

高齢化が進む中、集落の存続は大きな課題です。「このままでは集落がなくなってしまう」と危惧する大川さんは、若い力で集落に新たな息吹を吹き込んでほしいと願っています。
後継者への期待と支援
「農業を通して集落を守っていきたい」という思いから、この地域の一員として共に暮らし、集落を守っていく担い手を大川さんは探しています。

後継者には4〜5年ほど一緒に農業に取り組みながら技術を学んでほしいと考えています。「とにかく1年でも2年でもやってみれば大体の流れがわかる」と、丁寧な指導を約束してくれています。この農業指導期間中も生活できるよう、お給料を支払う意向もあるとのこと。
「売るのではなく、継いでほしい」という大川さんの思いは強く、「本当に継いでくれるなら、一番安く譲れる形でいい」と語ります。
住居については、集落にいくつかある空き家の紹介もできますが、継ぎ手の方次第では大川さん宅でのルームシェア、そしてゆくゆくは自宅、山林や農地、農業機械などを譲りたいとも考えています。

地域の農家の方々も高齢化が進み、それぞれ自分の財産を子や孫に継がせたいと考えていますが、子どもたちが都会に出て戻る見込みが少ないのが現状です。集落全体として若い力を必要としている状況で、大川さんが先駆けとなってこの取り組みを進めています。
集落に定住し、この環境を守り継いでいく意志のある方が求められています。
新しい人生を秋田の自然の中で
「ここは自分のペースで暮らせる場所。自分の裁量で仕事を決められるのが農業の良さ」と語る大川さん。都会の喧騒を離れ、山々に囲まれた秋田の集落で、自然と共に生きる新しい人生を始めてみませんか?

四季折々の自然の変化を感じながら、先人から受け継いだ農地を守り、集落に新たな活力をもたらす―そんな挑戦をしたい方からのご連絡をお待ちしています。