羽田空港から新千歳空港まで飛行機で90分、新千歳空港から車で20分で訪れることができる北海道安平町。子育てや教育の町として力を入れており、2023年度からは、子どもたちが多種多様な価値観を学べることをテーマとした小中一貫の義務教育学校「安平町立早来学園」が開校。これからの未来を担う子どもたちがチャレンジしやすい土壌ができつつあります。
そんな新たなチャレンジが始まった安平町では、高齢化と後継者不在により事業を辞めてしまう事業者が増えつつあります。今回後継者を募集するのは、創業100年を超える和菓子店です。
創業100年を超える地域密着型の菓子店
大正7(1918)年に創業し、現在4代目の佐藤智栄さんが切り盛りしている「佐藤菓子舗」。店舗は合併前の旧早来町(はやきたちょう)にあり、酪農ととても縁が深い地域。なんと日本で初めてチーズ専門の工場ができた地域なのです。酪農とともに歩いてきたこのまちで、「佐藤菓子舗」は100年以上にわたって、地域のみなさまにおいしい和菓子を届けてきました。
商品ラインナップは、和菓子を中心に約20種類。長年愛され続けてきた和菓子の代表作は「サイロ最中」です。サイロとは米や小麦などの農作物や、家畜の飼料を蔵置・収蔵するための倉庫のことで、安平町には数年前まで、日本最古の木製サイロが現存していました。サイロ最中は酪農とともに歩んできた安平町の歴史を表しています。
また、創業時から変わらない味を守り続けている「御幸羊羹」や、薄皮に味噌をねり込んだ塩気のある甘みが昔懐かしい「みそまんじゅう」も人気があります。
先代から引き継いだこだわりの味
朝7時頃から仕込みを始め、午前中には当日分を仕上げるといい、売れ行きによりその日に作るお菓子の種類は異なるそうです。
「先代からの味を引き継いでいます。特にこだわっているのは『サイロ最中』の餡の練り方や、『みそまんじゅう』のみその味です。」
けい子さんが佐藤菓子舗の菓子を製造するようになったのは、50年前に嫁いできてから。初めのうちは技術を身につけることに苦労したと振り返ります。
菓子店としてのやりがいを伺うと、「お客様にご来店いただき、おいしいと言ってもらえること」と話すけい子さん。昔はイベントに積極的に出店し、お客様と直接話す機会がとても楽しかったといいます。
味を受け継いでくれる人に託したい
創業から100年以上、事業の存続が危ぶまれた時期もありました。それは、2018年に発生した北海道胆振東部地震で店舗が全壊する被害を受けたこと。廃業を考えた時期もありましたが、まわりのお客様からのあたたかい言葉に励まされ、事業を継続することを決め、現在は仮設店舗で営業しています。
仮設店舗に形を変えることとなりましたが、100年以上にわたり地域住民やお土産として多くの人に届けてきたお菓子の味と思いは変わりません。
「レシピすべてとは言いませんので、一部だけでも佐藤菓子舗の味を引き継いでもらえたら嬉しいです。希望があればレシピはお譲りしますし、菓子製造に必要な設備も一部譲渡します」
けい子さんはご自身の年齢を考え、続けていくことは難しく、後継者に佐藤菓子舗の味を託したいと考えています。地域おこし協力隊員として菓子製造の技術をけい子さんに学びながら、安平町で長く育まれてきた味を受け継ぐ意思のある方からの応募をお待ちしています。
充実した安平町の支援制度
佐藤菓子舗で菓子製造の技術を学んだ後は、安平町の充実した支援制度を活用することが可能です。
まず、活用を検討したいのが「安平町創業等支援事業補助金」です。
この補助金は、安平町での創業を予定している方に、創業に関わる経費の一部を補助する制度です。
上限200万円で2分の1(空き店舗活用の場合は上限250万円で3分の2)の範囲で、創業に必要な経費の補助を受けることができます。
例えば、佐藤菓子舗の仮店舗から移転し、新しい店舗を構える際の賃貸経費(交付年度のみ)、設備費、備品の購入費、店舗や新商品をPRするHP・パンフレット制作費用などに活用することができますので、ぜひ活用を検討してください。
次に紹介するのは、安平町商工会が主催する「安平町創業塾」です。
計5回のプログラムで、起業創業のコーディネーターを講師に招き、経営の基礎知識や資金調達方法、公的支援制度や経営シミュレーションなどを学ぶことができます。
コーディネーターから事業や経営に関するアドバイスを受けながら事業計画を立てられるだけでなく、安平町内で事業をはじめる仲間との横のつながりもつくることができます。
この創業塾に参加し、事業計画を作成し、町の認知を受けることが、「安平町創業等支援事業補助金」を利用する条件となっていますので、佐藤菓子舗での業務と並行して参加し、承継後の事業の計画を立てるとよいかもしれません。
「安平町創業等支援事業補助金」と「安平町創業塾」は、ぜひ利用したい制度ですが、この2つ以外にも安平町内の店舗で期間限定(最長2年)で出店することができる「安平町チャレンジショップ事業」やふるさと納税の返礼品や道の駅で販売する商品を開発する「安平町地域ブランド化推進事業支援補助金」など補助事業も用意されています。
また、短期間の滞在時に利用できる「おためし暮らし住宅」や、空き住宅を購入する際の費用の一部を支援する「空家住宅購入補助金」など、移住に関する制度も用意されていますので、合わせてご確認の上、ご活用ください。