
役者から農家へ。人生の大転換が生んだ新たな道
加藤寿さんの人生は、まさに映画のようなドラマに満ちています。
高校卒業後、東京に出てディーラーとして働いていた加藤さんでしたが、ここで人生の転期を迎えます。サラリーマン生活に馴染めなかった20代前半の頃、持ち前の運動神経の良さを買われ、友人の紹介でスタントマンの世界に足を踏み入れ、やがて役者の道へと進みました。
大河ドラマの剣劇アクショングループ「若駒」での活動、戦隊ものやロボット特撮番組への出演、さらにはブルース・リーの「死亡の塔」にも出演するなど、20年間にわたって役者として活躍。今でも特撮映画祭に招かれるそうで、当時の人気ぶりがうかがえます。
しかし、加藤さんが36歳のとき、父親の怪我をきっかけに故郷の北秋田市へ戻ることを決意。「大して儲かってる俳優でもなかったので」と謙遜しながら語る加藤さんですが、この決断が新たな人生の扉を開くことになりました。
雪国の知恵が生んだ冬の恵み。自然のリズムに寄り添う無農薬栽培

加藤さんが菌床しいたけ栽培を選んだ理由は、その安定性にありました。
「栽培期間が長いんです。野菜と違って極端な値崩れがないし、比較的安定しています」と語る通り、9月下旬から翌年5月まで約8ヶ月間という長期間にわたって収穫・出荷が可能です。
菌床しいたけの魅力は、完全無農薬栽培でありながら、野菜栽培ほど緻密な管理を必要としない点にあります。基本的な作業は温度管理と適度な散水のみ。「朝のうちに採らなきゃダメとか、そういったことはありません。比較的始めやすいと思います」と加藤さんは説明します。

年間スケジュールとしては、5月に古い菌床と新しい菌床を入れ替え。その後約4ヶ月間は温度・湿度管理を行い、9月下旬からしいたけの発生が始まります。収穫は午前中に行い、午後はパッキング作業。この作業を翌年5月まで継続します。
現在の経営規模は菌床6,500個。利益率は約50%で、菌床代約210万円を差し引いても十分な収益を確保できています。出荷先はJAを通じて東京市場へ送るほか、個人販売や地元スーパーなど複数のルートを確保しており、「売れ残ることはまずない」という安定した販路があります。
しいたけは病気もほとんどなく、JA指導員や菌床メーカーからの定期的な技術指導も受けられるため、未経験者でも安心して始められる環境が整っています。
山桜が告げる季節の調べ。心豊かな田舎暮らし
加藤さんが菌床しいたけを栽培している地域は、四季の移ろいを肌で感じられる自然豊かな土地です。春には山桜や藤の花が咲き誇り、夏には川でサクラマスやヤマメ釣りを楽しめます。トレッキングやスノーボードなどのアウトドアスポーツも盛んで、「自然が好きな人、アウトドアスポーツが好きな人には最適な環境」と加藤さんは語ります。
実際に、関東から赴任した医師が川釣りやハンティングに魅力を感じ、契約期間を延長して10数年間滞在したという事例もあるそうです。

「四季を感じながら山桜が咲くのを見て、藤の花が何百本、何千本と咲いているのを楽しめる。夏は川でサクラマスやヤマメが泳いでいるところを見られます」と、その表情は自然への深い愛情に満ちています。
豊かな自然と共に歩む人生への招待


譲渡対象となる資産は、しいたけ栽培用ハウスと設備一式、および田んぼ約2.9ヘクタール(減反で2028年までは畑としての利用となります)。菌床しいたけのハウスは頑丈なパイプ構造で、台風などにも耐えられる設計。「張り替えたばかりなので、どんなに短くても10年は使える」という耐久性を誇ります。
加藤さんは継ぎ手への技術指導を快く引き受ける意向で、「1年中ずっとはいないかもしれませんが、指導しながら教えます」と約束してくれています。

販路についても、JA出荷であれば登録手続きを行うだけで販売が可能。農業従事者が減少している現状では「大歓迎されるでしょう」と心強い状況です。
役者として20年間、人々に感動を届けてきた加藤さんが、今度は大地から生まれる恵みを次の世代に託そうとしています。「作物が実った喜びに生きがいを感じて、楽しく仕事できればいい」という飾らない言葉の中に、農業への深い愛情と人生への哲学が込められています。
時間に縛られない自由な働き方を求める人、自然の中でのライフスタイルを大切にしたい人、そして何より「楽しく仕事をしたい」と考える人に適した環境が整っています。
30年間蓄積された農業経験と知識を承継し、自然豊かな環境で暮らしたい方のご応募をお待ちしています。
自然豊かな北秋田の地で、あなたの人生の新章を始めてみませんか。
