工房の北にひろがるロングビーチ八丁浜
生地全面に細かい凸凹状の「シボ」があることが特徴の絹織物の縮緬(ちりめん)は、「丹後ちりめん」と言われるように、丹後地域の地場産業として発展してきました。絹を織るには適度な湿度が必要とされますが、ここ網野では海からの風が、その役割をになってきたのかもしれません。
海水浴シーズンはもちろん、サーファーからも人気の八丁浜海水浴場の砂浜から歩いて10分。格子状にたちならぶ網野市街地の一角にある織元金重を訪ねます。
「昭和28(1953)年に父がこの場所で機屋(はたや)をはじめました。小さい頃から機織りの音を聞いて育ちました。私が引き継いでから、50年になります。織るだけではなく、直接販売も行っています」
工房では、白生地と呼ばれる織物を織っています。絹の白い色を活かして、模様になった生地を織り、加工場で柔らかい着物の生地に仕上げて京都のお店に納品しています。この生地に染を施して、最終的に着物として仕上がります。
織物の設計図である紋紙と重厚な織機
木造の工房の中には、機(はた)と呼ばれる織るための機械が30数台あるそうですが、現在は十数台を使っています。
「ガチャンガチャン」という音が一定のリズムで糸を織りあげていきます。シャトル織機とよばれるジャカード織機は、緯糸(よこいと)が、杼(ひ)という木の舟で生地の上を左右に行きかいます。傍らには、経糸(たていと)が準備されて出番を待っています。
白生地のちりめんに模様をつけるのも田茂井さんがご自身で手がけています。織柄を決めデータにおこし、好きな柄を自在に織ることも可能です。
絹織物・丹後ちりめんの技術を習得
絹織物・ちりめんの産地である丹後地域でも、市場の縮小とともに生産量が減少していますが、工芸としてのニーズは残り続けています。日本人にとって、七五三や成人式といった行事や、茶道・華道・日本舞踊でも着物は欠かせないものです。また、フランスのファッションショー「パリコレ」での出品作品や、ハリウッド映画の衣裳など、世界中でも製品に採用されていることもあります。
日本に受け継がれてきた着物文化を次世代につなぐため、京丹後市も後押しし、織物製造の技術を習得できるインターンを募集することにしました。
田茂井さんは、「器用にすぐできる人でなくともよいです、自分自身で一歩ずつ試行錯誤できる人が向いていますね」と話します。織ること自体は難しくなく、最低3ヶ月間かけて学べばトラブルへの対応の経験も身につくといいます。
「これが作りたい、と自分で作りたいものがあれば、楽しみながらオリジナルの商品をつくることができると思います。座学というよりも、現場に飛び込み、技術を習得してほしいと思います」
丁寧に織ることを続けてこられた田茂井さんは、大学生やデザイナーのインターンを受け入れた経験もあり、新しい風を取り入れることに前向きです。
海辺のまちに暮らしながら、織物に携わりたい方をお待ちしています。