「絶対直らない」と言われたバイクが蘇る技術
「他の店で直せないバイクを直して、お客さんが喜んでくれた時の感動がたまりません」。
東松島市で長年にわたりバイク修理の匠として知られる佐々木仁さん(75)は、そう語る目を輝かせます。
「有限会社バイクショップいしのまき」は、KAWASAKIのバイクの販売・修理を専門とする工場として、県外からも多くのライダーが訪れます。
佐々木さんは自動車整備士としてキャリアをスタートし、その後、川崎オートバイで11年間サービスインストラクターとして勤務。新型バイクの整備方法を東北6県の販売店に指導してきた稀有な経歴を持っています。
昭和63年に独立して以来、35年以上にわたり東松島市で営業を続け、50年前の旧型バイクの修理依頼が県外からも舞い込むなど、その確かな技術と丁寧な仕事ぶりは、地域住民のみならず、全国のバイク愛好家からも高い評価を得ています。
地域に不可欠なバイクのドクター
東松島市内唯一のバイク専門店として、大型バイクの車検から近所のおばあちゃんの原付スクーターのタイヤ交換まで、地域の足を守り続けています。年間50~60台の車検をこなし、シーズン中は修理依頼が途切れることがありません。また、近年はネット購入したバイクの整備依頼も増加しており、専門店の需要は高まる一方です。
技術と情熱を受け継ぐ意欲的な後継者を求めて
後継者には、バイクの整備士資格(3級以上)を持ち、200キロを超える大型バイクの積み下ろしにも対応できる体力のある方を求めています。技術面については「基本さえわかれば」と佐々木さん。35年の経験と技術、そして顧客との信頼関係を惜しみなく伝授する準備が整っています。
事業承継にあたっては、東松島市の地域おこし協力隊制度を活用し、3年間は佐々木さんの直接指導のもと、技術の習得と経営ノウハウの承継に専念していただきます。
店舗や設備、在庫(現在原価計算で約100万円程度)の承継についても、新しい経営者の負担を最小限に抑える方向で調整を進めており、認定工場を継続するための2級整備士やその他必要な資格の取得支援など、長期的な育成プランも用意されています。
「バイク文化を絶やしたくない」と語る佐々木さん。高度経済成長期から現代まで、バイクの進化とともに歩んできた技術者として、次世代への承継を強く願っています。
地域のライダーたちの期待を背負い、新たな時代の「有限会社バイクショップいしのまき」を作り上げていく—そんな意欲的な後継者との出会いを佐々木さんは心待ちにしています。